感情の揺れ方

それでも笑っていたい

2023年を振り返って

命の果てに至るまで、誰をも幸福と呼ぶなかれ 2023年を振り返るとは言うものの、やはり何も為すことがなかったという一言に尽きる。愛するものを愛し続けるために、血を流さなければならなくなった。Twitterはやめた。人よりも努力をすることが悪徳と見なさ…

感想:月組公演『DEATH TAKES A HOLIDAY』

「苦しまなければいいということでもないのが厄介ですな。 苦しみを知らずに愛を知るということができるでしょうか」 ──ダリオ・アルビオーネ男爵 東急シアターオーブで上演された月組公演『DEATH TAKES A HOLIDAY』は、アルバート・ガゼーラ氏による戯曲を…

映画評:是枝裕和監督作『怪物』

坂元裕二がまさか世界的な評価を得ることになるとは思ってもみなかった。カンヌで賞を取るより前から、是枝監督が坂元脚本で映画を撮るということで気になっていたこの『怪物』。ある出来事に関するひとつのシークエンスを三つの視点──親・教師・子供の視点─…

映画評:トッド・フィールド監督作『TAR』

映画の評価が「俳優の演技・映像・演出・設定」だけで決まるとしたら、この『TAR』はまごうことなき傑作だった。そう断言できるほどにケイト・ブランシェットをはじめとした演者のパフォーマンスは素晴らしいものだったし、執拗なほどに徹底した同じモチーフ…

真風涼帆・潤花の退団によせて

ダニー・オーシャン、シャーロック・ホームズ、そしてジェームズ・ボンド。これらの役をたった一人の俳優が、それも「宝塚歌劇のトップスター」として演じるということの重責、そして困難は想像するにあまりあるが、真風涼帆という舞台人は常に最高のパフォ…

感想:宙組公演『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』

真風涼帆・潤花の退団公演があの『007』、しかもあの『カジノ・ロワイヤル』に決まったという知らせを耳にしたときは、一体全体どうなるんだと期待に胸が膨らんだ。ジェームズ・ボンドという、全世界で愛されるキャラクターを、しかもミュージカルで。ショー…

劇評:ジョン・ケアード演出『ジェーン・エア』

ジェーン・エアは引き裂かれている。その内に「分裂」を抱えている。その「分裂」を乗り越え、ジェーンがアイデンティティを手に入れる。それがこのミュージカル『ジェーン・エア』なのだ。 父と母を亡くし、孤児となったとき。伯母のミセス・リードに引き取…

劇評:眞鍋卓嗣演出『ドリームガールズ』

「名曲がひとつでもあればミュージカルは名作となる」なんて言説があるけれど、この作品にその格言は当てはまらないようだった。『ドリームガールズ』。トニー賞やグラミー賞を受賞した大ヒットミュージカルで、日本では2006年にビヨンセが主演した映画版の…

日々のこと(2022/11/5~)

早くも2022年が終わろうとしている。西暦2023年という数字への違和感が拭えないのは、新型感染症が流行してから世界が止まったような感覚に陥っているからだろう。加えて今年は生まれてから26年とすこしを過ごした滋賀県を離れ遠く東京で大学院生として独り…

2022年の観劇生活を振り返る

maholo2611.hatenablog.com 2022年、このエントリーの結びで述べた願いは残念ながら達成されず、新型感染症は収まることなく舞台演劇、動員系エンタメの脅威となったままです。宝塚歌劇団も長期に渡る休演があり、その他劇場で上演されるはずだった演目が中…

日々のこと(2022/09/15~)

最低でも一ヶ月に一回のペースで更新しようと思っていたこの「日々のこと」シリーズだったのに、あっという間に二ヶ月近い空白を生むこととなってしまった。忙しさにかまけている。アルバイトと研究、執筆の三本柱。いや「生活」を加えた四本柱でどうにかや…

感想:月組公演『グレート・ギャツビー』

美しいものを見て自然と涙がこぼれるという経験をしたことはあるが──太陽を反射する春先の通り雨、エル・グレコがキャンバスに刻んだ騎士の忠誠、オナガドリのはく製──舞台に立つ人間の、それも、ただスポットライトを反射する後ろ姿を見てその美しさに涙す…

劇評:小林香演出『モダン・ミリー』

「ニューヨークに生まれることは誰でも出来るわ。でもここへ来るには、勇気と想像力がいる」 「越境」が大きなテーマのひとつとなっている『モダン・ミリー』という作品の中にあって、もっとも印象的かつ作品そのものを端的に表現しているセリフはこの一節だ…

日々のこと(2022/08/15~)

感染症と孤独による不調 東京に来てから半年が経った。まだ自分がこの街にフィットしているという感覚はない。いつかここが自分の街ですと、躊躇いなく滑らかに言える日が来るのだろうか。何かを為すのが先か、しっぽを巻くのが先か。それはそれとして、夏が…

劇評:マイケル・アーデン演出『ガイズ&ドールズ』

舞台演劇、ひいてはエンターテインメント、いやおよそすべての人々がコロナ禍の長いトンネルに苦しむ中、『ガイズ&ドールズ』もまたそのすべての公演が無事に上演されたわけではなかった。公演中止の報が日常茶飯事になったとしても、中止になった公演が自分…

日々のこと(2022/05/05~)

春が過ぎ地獄のような夏が来た。東京に来て5ヶ月くらいが経つ。夏季休暇期間を迎えることが出来た。本当に、ひょっとしたら夏になる前にどこかのタイミングで倒れるかもしれないなと思った。上京と新生活への高揚感、自らへのプレッシャーで自分のキャパシテ…

日々のこと(2022/4/10~)

東京に来てからだいたい2か月が経った。講義とアルバイトが始まった。学部とは分野の違う専攻なので、力不足を痛感する毎日が続いている。やるしかない。最近はずっとホットケーキを食べている。自分で焼いて。誰に注意されることもないので、びたびたにメー…

週間日記(2022/04/04~04/10)

4/4(月):めちゃくちゃ寒い。冷たい雨が降り続いている。洗濯機を回すタイミングを逸してしまい、大変な状況になりつつある。明日に全賭け。適当に起きて、『ラヴィット!』を見る。ぼる塾の三人が京都観光をしていて、めちゃくちゃ帰りたくなった。滋賀の人…

週間日記(2022/3/28~4/3)

3/28(月):春。一生このままでいいくらいの春。適当に起きて、『ラヴィット!』を見る。今週は一周年記念ウィークということで、各曜日のレギュラー陣が別の曜日に出演する流れになっている。かなりお祭りの雰囲気。なんといってもオープニングが45分くらいあ…

週間日記(2022/3/21~3/27)

3/21(月):寒い。普通に。嫌です。適当に起きて『ラヴィット!』を見る。生活がすこし落ち着いてきたので、作業に次ぐ作業としたいところなのだが、午前中は昨日入っていた不在届の再配達を指定していたので、あまり集中できず。「来るぞ来るぞ」と思いながら…

「推し」が生む「ファン」の変化について

第一章「『推し』という言葉に伴う変化」 第二章「変化の内実」 第三章「『支援』の在り方と飛躍する『ファン』」 第四章「『ファン』の『スタッフ化』が生む弊害』 第一章「『推し』という言葉に伴う変化」 「推し」あるいは「推す」という言葉、概念が市民…

「正しさ」の誘惑についての所見

第一章「『correct』に至る『collect』」 第二章「『正しさ』への欲望」 第三章「『考察』とはなにか」 第一章「『correct』に至る『collect』」 およそ現代の日本において、「コレクト」という言葉を耳に、あるいは目にしたときに連想されるのは「コレクタ…

2015年星組公演『ガイズ&ドールズ』──オシャレなセリフとギャンブラーの両手──

「教会に従い迷い捨てよう 祈り知らぬ者たち いざ教会へ」 ──『フォロー・ザ・フォールド』より ミュージカル『ガイズ&ドールズ』において何度も繰り返されるこの曲、この一節にある「祈り知らぬ者たち」とは誰のことだろう。すぐに思いつくのはブロードウェ…

週間日記(2022/03/14~03/20)

3/14(月):めちゃくちゃ天気が良い。春を通り越して夏に片足を突っ込んでいるような陽気だが、本物の夏はおそらくこんなものじゃない。こっちとしては「夏」ってこれくらいでいいよねと思ったりする。陽向で滲んだ汗が日影で乾くくらいでちょうどいい。適当…

感想:宙組公演『NEVER SAY GOODBY』

サヨナラは決して終わりではない──。『NEVER SAY GOODBY』は永遠の異邦人として生きてきたカメラマン、ジョルジュ・マルロー(真風涼帆)が生きていく意味を、そして死に場所を見つける物語だ。ポーランドに生まれ、パリへ渡り、やがてアメリカへ行きついたジ…

劇評:上村聡史『ガラスの動物園』

家族とはなにか。トム・ウィングフィールドが追憶の中で示す「家族」とは牢獄であり、棺桶だった。夜な夜な家を抜け出し街を彷徨うトムが焦がれたのは、「ここではないどこか」を鮮やかに描き出す映画、あるいは死地から巧みに抜け出す脱出マジックだった。…

週間日記(2022/03/07~03/13)

3/7(月):寒い。ゴリゴリに寒い。最低気温は当たり前のような顔で氷点下を記録している。春の助走が長い。大ジャンプが待たれる。適当に起きて、ぼんやりと『ラヴィット!』を見る。今日も基本的に荷造りの一日。お昼前に外出して、ジャンプを買いにいったく…

週間日記(2022/02/28~03/06)

2/28(月):寒さが……やわらいでいる。日照時間も長くなっている。2月の終わりにして、春の始まりが見えている。適当に起きて、『ラヴィット!』を見る。ぼる塾・田辺さんによる、オープニングトーク終わりのタイトルコールをするMCふたりの前を思いっきり横切…

週間日記(2022/02/21~02/27)

2/21(月):寒い。朝起きてカーテンを開けたら、雪景色。今シーズンは本当に厳しい天候が続いている。『ラヴィット!』には今日もなすなかにしが出ていた。2月だけで言ったらMCのふたりより出ているんじゃないだろうか。午前中は宅配の待機に費やす。佐川急便…

週間日記(2022/02/14~02/20)

2/14(月):ハッピーバレンタイン。みなさんいかがお過ごしですか。バレンタインは恋人のチョコレートを贈るイベントではなく、世界中から美味しいチョコレートが日本に終結する催しだと思っていますが、いかがですか。適当に起きる。各メディアで報道されて…