感想
美しいものを見て自然と涙がこぼれるという経験をしたことはあるが──太陽を反射する春先の通り雨、エル・グレコがキャンバスに刻んだ騎士の忠誠、オナガドリのはく製──舞台に立つ人間の、それも、ただスポットライトを反射する後ろ姿を見てその美しさに涙す…
サヨナラは決して終わりではない──。『NEVER SAY GOODBY』は永遠の異邦人として生きてきたカメラマン、ジョルジュ・マルロー(真風涼帆)が生きていく意味を、そして死に場所を見つける物語だ。ポーランドに生まれ、パリへ渡り、やがてアメリカへ行きついたジ…
月組新トップコンビ月城かなと・海乃美月のお披露目公演が宝塚大劇場で開幕した。二本立ての一本目は『今夜、ロマンス劇場で』、演出は小柳奈穂子氏。2018年に公開された同名の映画作品を舞台化したものとなる。物語は1960年代の映画業界を舞台に、助監督と…
宙組トップ娘役として活躍し、専科を経て花組トップ娘役に就任した星風まどかの大劇場お披露目公演となる『元禄バロックロック/The Fascination!』が幕を開けた。『元禄バロックロック』の作・演出を務める谷貴矢氏の大劇場デビュー作でもある。2016年花組バ…
さる11月3日、新型感染症の流行を受けて延期されていた「仙名彩世 サロンコンサート」が宝塚ホテルで開催された。本来は8月の開催だったこのコンサートが、およそ3ヶ月経って無事に開催されたことがまず嬉しく、同時にさまざまな苦労を重ねていただいた出演…
月組新トップコンビ月城かなと・海乃美月のお披露目公演『川霧の橋/Dream Chaser』が博多の地で幕を開けた。山本周五郎氏による『柳橋物語』『ひとでなし』の二作品をもとに柴田侑宏氏が創り上げた『川霧の橋』は、1990年に同じく月組の剣幸とこだま愛の退団…
男役・礼真琴にまた新たな一ページが追加された。若手の頃から抜擢が続き、まさしく躍進してきた彼は若く爽やかな主人公、あるいは強い意志を持った悪役を演じることが多かったが、柳生十兵衛というキャラクターは今までと違った意味でチャレンジングな役ど…
「宝塚歌劇らしさ」といったことについて考えるときに浮かんでくるのは、やはり「美」や「正義」、「平等」あるいは「愛」といったものだろうか。つかこうへい氏による『蒲田行進曲』を下敷きにしたこの『銀ちゃんの恋』に「タカラヅカ的」な潔白さや綺麗事…
雪組新トップコンビ彩風咲奈・朝月希和の大劇場お披露目公演が幕を開けている。演目は『CITY HUNTER』で、「あの『シティーハンター』を!?」と驚いたファンも少なくないだろう。もちろん私もその一人で、正直なところ一体どこをどうやってあの世界を舞台に、…
シャーロック・ホームズ。おそらく世界で最も有名な探偵であり、「聖書の次に読者が多い」と評されることもある「ホームズ」が、宝塚の舞台に登場した。並外れた頭脳に詰め込まれた、偏った知識。部屋の壁に銃を打つ(しかも下宿の)などの悪癖……「頭の良い変…
月組トップコンビ珠城りょう・美園さくらの退団公演となる『桜嵐記/Dream Chaser!』が始まりの時を迎えた。一年以上が経っても新型感染症の拡大に歯止めがかからず、さまざまな分野や業界、そして個人個人に制約がかけられる状況の中でこの公演の幕が上がっ…
花組トップスター・柚香光の2作目、そしてトップ娘役華優希のサヨナラ公演となる『アウグストゥス─尊厳ある人─/Cool Beast!!』が幕を開けた。 『アウグストゥス』は田渕大輔氏によるオリジナル作品で、古代ローマ帝国初の皇帝となったオクタヴィウスを主人…
ミュージカル『ロミオとジュリエット』が、礼真琴・舞空瞳率いる星組によって宝塚の舞台に帰ってきた。シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』をジェラール・プレスギュルヴィック氏が新たにミュージカル化したこの作品の日本初演が2010年。それから…
現雪組トップコンビ、望海風斗・真彩希帆の退団公演が幕を開けた。2020年は新型感染症の流行を受けて世界全体が様々な影響を受けた年であり、2021年になってもその状況は変わっていない。この『fff』もまた、本来の上演スケジュールから変更を余儀なくされた…
礼真琴がティリアン・パーシモンを演じるのは必然だったのかもしれない。2007年、安蘭けい・遠野あすかというトップコンビを中心にした星組で上演された『エル・アルコン─鷹─』は、主人公ティリアン・パーシモンがが今までの宝塚らしくない、いわゆる「ダー…
ミュージカル『アナスタシア』。おそらくだが、2020年日本のミュージカルシーンはこの作品が席巻するはずだった。はずだったのだ。新たな感染症が世界中で流行し、人々が分断され、ありとあらゆる舞台の幕が閉じたままになるという事態に直面することがなけ…
新型感染症の流行に際し、あらゆる舞台の幕が閉じられてからもう半年ほどが経つ。東西に常設の専用劇場を擁し、100年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団も例外ではなかった。本拠地の宝塚大劇場も、東京宝塚劇場も、公演中止を余儀なくされた。席数削減、オーケスト…
礼真琴。2009年に95期生として宝塚に入団、星組に配属されたのち若くから抜擢が続いた彼がいずれトップスターになるであろうことは、ファンの間では周知の事実だったと言っていいだろう。彼の実力、特に歌唱力とダンス力は際立っていた。2011年星組公演『ノ…
2020年の一作目に、宝塚歌劇団はとんでもないものをぶつけてきた。宝塚らしさと宝塚らしくない要素を兼ね備えたその作品は、トップスター望海風斗の代名詞となるだろう。それが『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』である。およそ一年前の公演『ファントム』は、…
明日海りおというトップスターの魅力は何だろう。得も言われぬ麗しさ、安定感のある歌唱、相手役を包み込む懐の深さ…。そのすべてが唯一無二のものだが、明日海りおの最も突出した魅力は、表現力にあると私は思っている。演技力だけではない、スタイリングも…
北翔海莉は、稀有なトップスターだったと思う。1998年に84期生として入団、1999年に月組へ配属された直後の『ノバ・ボサ・ノバ』では出世役として知られるドアボーイ役をつとめるなど早くから頭角を現し、新人公演・バウホール公演での主演を経て2006年に宙…
スターシステムや男役娘役など、「宝塚歌劇」には数多くの特徴がある。その中でも大きな特徴になるのが、「オリジナル作品の多さ」だろう。およそ400人の組子(劇団員)、30人近い座付きの演出家を抱えるこの巨大劇団は、海外ミュージカルの日本初演や原作物の…
傑作。傑作も傑作、大傑作です。11月も終わりを迎えるこの時期に、2019年の宝塚で一二を争う傑作が誕生しました。その名も『ロックオペラ モーツァルト』。紅ゆずる・綺咲愛里の後を継ぎ、星組トップスターに就任した礼真琴・舞空瞳のトッププレお披露目公演…
円熟味を増している宙組トップスター真風涼帆さんの本公演4作目が幕を開けました。原作なしのオリジナル作品『エルハポン』とショー『アクアヴィーテ』の2本立てになっています。大野拓史先生によるオリジナル作品ということで、やはり「誰がどのようなキャ…
宝塚歌劇団とウィーン・ミュージカルと言えば、思い出されるのはやはり『エリザベート』でしょうか。初演から大好評を博し、今では「宝塚といえば」と言われるほどの作品として愛されています。その『エリザベート』を生み出したウィーン劇場協会が再びタッ…
「トップ・オブ・トップ」こと花組トップスター明日海りおのサヨナラ公演が遂に始まってしまいました。「トップ就任は余命宣告」ということは重々理解していたつもりではありますが、やはり寂しい。この公演を劇場で観ることが出来たという幸運に感謝しつつ…
宝塚歌劇団にはすみれコードというものがある。コードという名前の通り、これはある種の「暗黙のルール」であって、劇団だけでなくファンも守るべきものということになっている。例えば組子の本名や年齢が公表されることはない。そして「すみれコード」は組…
紅ゆずる・綺咲愛里のサヨナラ公演が幕を開けました。『食聖』は小柳菜穂子先生の作・演出。星組と小柳先生のタッグと言えば、数年前のバウホール公演『かもめ』や昨年の台湾公演『Thunderbolt Funtasy』などがありますが、個人的に印象に残っているのは『め…
今回は雪組の大劇場公演を観てきました。ぴあとコラボした「父の日スペシャル」だったので、客席の男性率がいつもより高かったような気がします。演目が『壬生義士伝』ということもあったのかな。浅田次郎の同名小説を原作にした『壬生義士伝』は脚本・演出…
10連休の後半に宙組公演『オーシャンズ11』を観劇してきました。いやぁ今回の公演は本当にチケットが取れない。友の会はもちろんぴあも全く。箸にも棒にもという感じでした。なんとかローチケで一公演だけ確保出来ました。本当にありがたい。ローチケの貸切…