宝塚
礼真琴がティリアン・パーシモンを演じるのは必然だったのかもしれない。2007年、安蘭けい・遠野あすかというトップコンビを中心にした星組で上演された『エル・アルコン─鷹─』は、主人公ティリアン・パーシモンがが今までの宝塚らしくない、いわゆる「ダー…
ミュージカル『アナスタシア』。おそらくだが、2020年日本のミュージカルシーンはこの作品が席巻するはずだった。はずだったのだ。新たな感染症が世界中で流行し、人々が分断され、ありとあらゆる舞台の幕が閉じたままになるという事態に直面することがなけ…
新型感染症の流行に際し、あらゆる舞台の幕が閉じられてからもう半年ほどが経つ。東西に常設の専用劇場を擁し、100年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団も例外ではなかった。本拠地の宝塚大劇場も、東京宝塚劇場も、公演中止を余儀なくされた。席数削減、オーケスト…
野望に生きたジュリアン・クレールは最後に愛を知ることが出来たのかもしれない。しかし、友情を知ることは最後までなかった。 柴田侑宏作『アルジェの男』は1974年に初演、以来1983年と2011にも再演、2019年には礼真琴を主演に据え星組で上演された。物語は…
『極上の美 永遠の命 底知れぬ恐怖 知りえぬナゾ 伝説の中に 青い霧と たそがれと闇の中に しとどおちる血と 冷たい指と ほほえみの中に 霧の森の奥深く バラ咲き乱れる苑に住む 我らは一族 時を止め 生き続ける 我らは一族 ポーの一族』 目の前の人間が本当…
信頼できない語り手(しんらいできないかたりて、信用できない語り手、英語: Unreliable narrator)は、小説や映画などで物語を進める手法の一つ(叙述トリックの一種)で、語り手(ナレーター、語り部)の信頼性を著しく低いものにすることにより、読者や観…
1920年代アメリカ、狂乱のジャズ・エイジ。人々は歌い、踊り、不可能など存在しないかに思われた栄光の時代。その象徴として生き、挫折を背負いながら死んでいったスコット・フィッツジェラルド。そんな彼の波乱に満ちた人生を描くのが、植田景子作・演出の…
朝夏まなとは、本当に演技の上手い男役だったと思う。それも何と言えば良いのか、あらゆる役柄を「宝塚の男役に落とし込む」のが上手い男役だった。トップスター就任以降、『王家に捧ぐ歌』のラダメス、『シェイクスピア』のウィリアム、『エリザベート』の…
2020年3月30日現在、新型コロナウイルスの流行により、自粛が続いています。ウイルスはじわじわと、しかし確実に人々の肉体、生活を蝕み、物理的にも精神的にもつらい毎日をみんなが過ごしています。自粛の波は立場、肩書きに関係なく暗い影を落としています…
礼真琴。2009年に95期生として宝塚に入団、星組に配属されたのち若くから抜擢が続いた彼がいずれトップスターになるであろうことは、ファンの間では周知の事実だったと言っていいだろう。彼の実力、特に歌唱力とダンス力は際立っていた。2011年星組公演『ノ…
2020年の一作目に、宝塚歌劇団はとんでもないものをぶつけてきた。宝塚らしさと宝塚らしくない要素を兼ね備えたその作品は、トップスター望海風斗の代名詞となるだろう。それが『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』である。およそ一年前の公演『ファントム』は、…
明日海りおというトップスターの魅力は何だろう。得も言われぬ麗しさ、安定感のある歌唱、相手役を包み込む懐の深さ…。そのすべてが唯一無二のものだが、明日海りおの最も突出した魅力は、表現力にあると私は思っている。演技力だけではない、スタイリングも…
2019年、宝塚歌劇団は105周年を迎えた。あの100周年がもう5年も前なのか、あの運動会がもう5年も前なのかと、月日の速さには驚くばかりだ。2019年もあっという間に過ぎ去り宝塚は106年目となる2020年を迎えたが、今回は歌劇団の2019年を振り返りたいと思う。…
北翔海莉は、稀有なトップスターだったと思う。1998年に84期生として入団、1999年に月組へ配属された直後の『ノバ・ボサ・ノバ』では出世役として知られるドアボーイ役をつとめるなど早くから頭角を現し、新人公演・バウホール公演での主演を経て2006年に宙…
スターシステムや男役娘役など、「宝塚歌劇」には数多くの特徴がある。その中でも大きな特徴になるのが、「オリジナル作品の多さ」だろう。およそ400人の組子(劇団員)、30人近い座付きの演出家を抱えるこの巨大劇団は、海外ミュージカルの日本初演や原作物の…
傑作。傑作も傑作、大傑作です。11月も終わりを迎えるこの時期に、2019年の宝塚で一二を争う傑作が誕生しました。その名も『ロックオペラ モーツァルト』。紅ゆずる・綺咲愛里の後を継ぎ、星組トップスターに就任した礼真琴・舞空瞳のトッププレお披露目公演…
円熟味を増している宙組トップスター真風涼帆さんの本公演4作目が幕を開けました。原作なしのオリジナル作品『エルハポン』とショー『アクアヴィーテ』の2本立てになっています。大野拓史先生によるオリジナル作品ということで、やはり「誰がどのようなキャ…
11月も終わりに差し掛かり、2020年がその気配を強くし始めている今日この頃。2019年の観劇生活もあと数回の公演を残すばかりになり、気になったことがあります。 宝塚友の会、全然チケット当たってないんじゃないか? 友の会。各公演のチケットを一般販売に…
宝塚歌劇団とウィーン・ミュージカルと言えば、思い出されるのはやはり『エリザベート』でしょうか。初演から大好評を博し、今では「宝塚といえば」と言われるほどの作品として愛されています。その『エリザベート』を生み出したウィーン劇場協会が再びタッ…
さる2019年9月30日、ひとりのタカラジェンヌが宝塚大劇場を卒業した。花組トップスター、明日海りおである。彼は2003年『花の宝塚風土記/シニョール・ドン・ファン』で初舞台を踏み、月組に配属された。その後2008年のバウ・ワークショップ『ホフマン物語』…
「トップ・オブ・トップ」こと花組トップスター明日海りおのサヨナラ公演が遂に始まってしまいました。「トップ就任は余命宣告」ということは重々理解していたつもりではありますが、やはり寂しい。この公演を劇場で観ることが出来たという幸運に感謝しつつ…
宝塚歌劇団にはすみれコードというものがある。コードという名前の通り、これはある種の「暗黙のルール」であって、劇団だけでなくファンも守るべきものということになっている。例えば組子の本名や年齢が公表されることはない。そして「すみれコード」は組…
七海ひろきが宝塚歌劇団を退団してからもう5ヶ月が経つ。彼、いや彼女が退団後も活動を続けてくれるのかという不安は、私だけが抱いていたものではなかっただろう。およそ400人という組子を誇る宝塚歌劇団にあって、退団後も精力的に芸能活動を続ける組子は…
昨日、宝塚歌劇団公式ホームページにおいて、組替えが発表された。正直、宝塚のファン歴が長い人なら規模の大小はあれどそろそろ発表されるだろうなとは思っていただろう。星組と花組の次期トップスター発表、そして花組娘役の大量退団などきっかけになりそ…
紅ゆずる・綺咲愛里の退団公演、『GOD OF STARS─食聖─/Éclair Brillant』が7月12日に宝塚大劇場で初日を迎えた。この公演の大千秋楽、すなわち10月13日の東京宝塚劇場公演を持って、二人は宝塚を去る。紅ゆずるは男役ではなくなり、綺咲愛里は娘役ではなくな…
紅ゆずる・綺咲愛里のサヨナラ公演が幕を開けました。『食聖』は小柳菜穂子先生の作・演出。星組と小柳先生のタッグと言えば、数年前のバウホール公演『かもめ』や昨年の台湾公演『Thunderbolt Funtasy』などがありますが、個人的に印象に残っているのは『め…
先日、ついに花組の次期トップスター、つまり明日海りおの後任が発表された。大劇場公演の集合日当日、そして翌日にも発表されなかったということもありファンには待望の発表だったのではないかと思う。もちろん私もそういうファンの一人だ。 肝心の次期トッ…
今回は雪組の大劇場公演を観てきました。ぴあとコラボした「父の日スペシャル」だったので、客席の男性率がいつもより高かったような気がします。演目が『壬生義士伝』ということもあったのかな。浅田次郎の同名小説を原作にした『壬生義士伝』は脚本・演出…
10連休の後半に宙組公演『オーシャンズ11』を観劇してきました。いやぁ今回の公演は本当にチケットが取れない。友の会はもちろんぴあも全く。箸にも棒にもという感じでした。なんとかローチケで一公演だけ確保出来ました。本当にありがたい。ローチケの貸切…
少し前に、宝塚歌劇団月組公演『夢現無双/クルンテープ 天使の都』を観劇してきました。原作は有名な吉川英治さんの『宮本武蔵』。脚本・演出は齋藤吉正先生。齋藤先生の日本物といえばやっぱり星組公演の『桜華に舞え』が思い出されます。北翔海莉さんの退…