感情の揺れ方

それでも笑っていたい

宝塚

2015年星組公演『ガイズ&ドールズ』──オシャレなセリフとギャンブラーの両手──

「教会に従い迷い捨てよう 祈り知らぬ者たち いざ教会へ」 ──『フォロー・ザ・フォールド』より ミュージカル『ガイズ&ドールズ』において何度も繰り返されるこの曲、この一節にある「祈り知らぬ者たち」とは誰のことだろう。すぐに思いつくのはブロードウェ…

感想:宙組公演『NEVER SAY GOODBY』

サヨナラは決して終わりではない──。『NEVER SAY GOODBY』は永遠の異邦人として生きてきたカメラマン、ジョルジュ・マルロー(真風涼帆)が生きていく意味を、そして死に場所を見つける物語だ。ポーランドに生まれ、パリへ渡り、やがてアメリカへ行きついたジ…

感想:月組公演『今夜、ロマンス劇場で/FULL SWING!』

月組新トップコンビ月城かなと・海乃美月のお披露目公演が宝塚大劇場で開幕した。二本立ての一本目は『今夜、ロマンス劇場で』、演出は小柳奈穂子氏。2018年に公開された同名の映画作品を舞台化したものとなる。物語は1960年代の映画業界を舞台に、助監督と…

2021年の観劇生活を振り返る

新型感染症が猛威を振るい続ける2021年、舞台演劇ひいては動員を伴う興行は未だ苦境に立たされています。それでも関係者全員が工夫を重ね、2020年と比べればどうにか上演に至った公演は増えてきました。特に二つの常設劇場、固定のスタッフ陣を誇る宝塚歌劇…

感想:花組公演『元禄バロックロック/The Fascination!』

宙組トップ娘役として活躍し、専科を経て花組トップ娘役に就任した星風まどかの大劇場お披露目公演となる『元禄バロックロック/The Fascination!』が幕を開けた。『元禄バロックロック』の作・演出を務める谷貴矢氏の大劇場デビュー作でもある。2016年花組バ…

感想:月組公演『川霧の橋』

月組新トップコンビ月城かなと・海乃美月のお披露目公演『川霧の橋/Dream Chaser』が博多の地で幕を開けた。山本周五郎氏による『柳橋物語』『ひとでなし』の二作品をもとに柴田侑宏氏が創り上げた『川霧の橋』は、1990年に同じく月組の剣幸とこだま愛の退団…

花組二番手不在問題について

花組トップスター・柚香光の本公演三作目となる『元禄バロックロック/The Fascination!』が11月6日に開幕した。花組と月組の誕生100周年を祝うこの作品が柚香光・星風まどかという新トップコンビのお披露目作品でもあることは非常に喜ばしいことだが、初日の…

2007年月組公演『パリの空よりも高く』~愛すべきペテン師たちの物語~

2回目となる万国博覧会の開催を前にした花の都、パリ。万博の目玉となる建築物「エッフェル塔」の建設には賛否両論が渦巻いていたが、その中心にはある人物が──ペテン師たちが、いた。 菊田一夫の名作『花咲く港』を下敷きにした『パリの空よりも高く』は植…

感想:星組公演『柳生忍法帖/モアー・ダンディズム!』

男役・礼真琴にまた新たな一ページが追加された。若手の頃から抜擢が続き、まさしく躍進してきた彼は若く爽やかな主人公、あるいは強い意志を持った悪役を演じることが多かったが、柳生十兵衛というキャラクターは今までと違った意味でチャレンジングな役ど…

感想:花組公演『銀ちゃんの恋』

「宝塚歌劇らしさ」といったことについて考えるときに浮かんでくるのは、やはり「美」や「正義」、「平等」あるいは「愛」といったものだろうか。つかこうへい氏による『蒲田行進曲』を下敷きにしたこの『銀ちゃんの恋』に「タカラヅカ的」な潔白さや綺麗事…

感想:雪組公演『CITY HUNTER─盗まれたXYZ─/Fire Fever!』

雪組新トップコンビ彩風咲奈・朝月希和の大劇場お披露目公演が幕を開けている。演目は『CITY HUNTER』で、「あの『シティーハンター』を!?」と驚いたファンも少なくないだろう。もちろん私もその一人で、正直なところ一体どこをどうやってあの世界を舞台に、…

感想:宙組公演『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-/Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』

シャーロック・ホームズ。おそらく世界で最も有名な探偵であり、「聖書の次に読者が多い」と評されることもある「ホームズ」が、宝塚の舞台に登場した。並外れた頭脳に詰め込まれた、偏った知識。部屋の壁に銃を打つ(しかも下宿の)などの悪癖……「頭の良い変…

感想:月組公演『桜嵐記/Dream Chaser!』~サヨナラ珠城りょう・美園さくら~

月組トップコンビ珠城りょう・美園さくらの退団公演となる『桜嵐記/Dream Chaser!』が始まりの時を迎えた。一年以上が経っても新型感染症の拡大に歯止めがかからず、さまざまな分野や業界、そして個人個人に制約がかけられる状況の中でこの公演の幕が上がっ…

感想:花組公演『アウグストゥス─尊厳ある者─/Cool Beast!!』 (後半は批判的な文章になっています)

花組トップスター・柚香光の2作目、そしてトップ娘役華優希のサヨナラ公演となる『アウグストゥス─尊厳ある人─/Cool Beast!!』が幕を開けた。 『アウグストゥス』は田渕大輔氏によるオリジナル作品で、古代ローマ帝国初の皇帝となったオクタヴィウスを主人…

望海風斗・真彩希帆の退団によせて

宝塚歌劇団雪組のトップコンビ、望海風斗・真彩希帆が2021年4月11日の『fff─フォルティッシッシモ─/シルクロード~盗賊と宝石~』東京宝塚劇場公演千秋楽をもって退団する。男役・望海風斗と娘役・真彩希帆。宝塚歌劇団の歴史に大きな足跡を残したふたりに、…

2010年代宝塚歌劇オリジナル作品お芝居5選&ショー10選

2020年、新型感染症の流行が拡大し、宝塚歌劇はもちろん演劇界全体が大きな影響を受けました。披露されることのなかった演目の数たるや、もはや想像することも出来ません。エンターテインメントが停滞した年。それが2020年でした。劇場に足を運ぶことが不可…

感想:星組公演『ロミオとジュリエット』

ミュージカル『ロミオとジュリエット』が、礼真琴・舞空瞳率いる星組によって宝塚の舞台に帰ってきた。シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』をジェラール・プレスギュルヴィック氏が新たにミュージカル化したこの作品の日本初演が2010年。それから…

感想:雪組公演『fff フォルティッシッシモ─歓喜に歌え!─/シルクロード~盗賊と宝石~』

現雪組トップコンビ、望海風斗・真彩希帆の退団公演が幕を開けた。2020年は新型感染症の流行を受けて世界全体が様々な影響を受けた年であり、2021年になってもその状況は変わっていない。この『fff』もまた、本来の上演スケジュールから変更を余儀なくされた…

感想:星組公演『エル・アルコン─鷹─/Ray─星の光線─』

礼真琴がティリアン・パーシモンを演じるのは必然だったのかもしれない。2007年、安蘭けい・遠野あすかというトップコンビを中心にした星組で上演された『エル・アルコン─鷹─』は、主人公ティリアン・パーシモンがが今までの宝塚らしくない、いわゆる「ダー…

感想:宙組公演『アナスタシア』~真風涼帆・星風まどかの遥かな旅路~

ミュージカル『アナスタシア』。おそらくだが、2020年日本のミュージカルシーンはこの作品が席巻するはずだった。はずだったのだ。新たな感染症が世界中で流行し、人々が分断され、ありとあらゆる舞台の幕が閉じたままになるという事態に直面することがなけ…

感想:雪組公演『NOW! ZOOM ME!!』

新型感染症の流行に際し、あらゆる舞台の幕が閉じられてからもう半年ほどが経つ。東西に常設の専用劇場を擁し、100年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団も例外ではなかった。本拠地の宝塚大劇場も、東京宝塚劇場も、公演中止を余儀なくされた。席数削減、オーケスト…

2019年星組公演『アルジェの男』─柴田侑宏の人間賛歌と、それに応える礼真琴─

野望に生きたジュリアン・クレールは最後に愛を知ることが出来たのかもしれない。しかし、友情を知ることは最後までなかった。 柴田侑宏作『アルジェの男』は1974年に初演、以来1983年と2011にも再演、2019年には礼真琴を主演に据え星組で上演された。物語は…

2018年花組公演『ポーの一族』~「極上の美」はそこにある~

『極上の美 永遠の命 底知れぬ恐怖 知りえぬナゾ 伝説の中に 青い霧と たそがれと闇の中に しとどおちる血と 冷たい指と ほほえみの中に 霧の森の奥深く バラ咲き乱れる苑に住む 我らは一族 時を止め 生き続ける 我らは一族 ポーの一族』 目の前の人間が本当…

ルイジ・ルキーニは「信頼できない語り手」か?~2014年花組公演ミュージカル『エリザベート─愛と死の輪舞─』より~

信頼できない語り手(しんらいできないかたりて、信用できない語り手、英語: Unreliable narrator)は、小説や映画などで物語を進める手法の一つ(叙述トリックの一種)で、語り手(ナレーター、語り部)の信頼性を著しく低いものにすることにより、読者や観…

2018年月組公演『THE LAST PARTY~S.Fitzgerald's last day~フィッツジェラルド最後の一日』─月城かなとの持つ細やかさ─

1920年代アメリカ、狂乱のジャズ・エイジ。人々は歌い、踊り、不可能など存在しないかに思われた栄光の時代。その象徴として生き、挫折を背負いながら死んでいったスコット・フィッツジェラルド。そんな彼の波乱に満ちた人生を描くのが、植田景子作・演出の…

2017年宙組公演『神々の土地~ロマノフたちの黄昏~』─サヨナラ朝夏まなと─

朝夏まなとは、本当に演技の上手い男役だったと思う。それも何と言えば良いのか、あらゆる役柄を「宝塚の男役に落とし込む」のが上手い男役だった。トップスター就任以降、『王家に捧ぐ歌』のラダメス、『シェイクスピア』のウィリアム、『エリザベート』の…

幕が上がっていた日々に思いを馳せて~これまでの舞台作品感想まとめ~

2020年3月30日現在、新型コロナウイルスの流行により、自粛が続いています。ウイルスはじわじわと、しかし確実に人々の肉体、生活を蝕み、物理的にも精神的にもつらい毎日をみんなが過ごしています。自粛の波は立場、肩書きに関係なく暗い影を落としています…

感想:星組公演『眩耀の谷~舞い降りた新星~/Ray─星の光線─』~礼真琴・舞空瞳はどこまで行くのか~

礼真琴。2009年に95期生として宝塚に入団、星組に配属されたのち若くから抜擢が続いた彼がいずれトップスターになるであろうことは、ファンの間では周知の事実だったと言っていいだろう。彼の実力、特に歌唱力とダンス力は際立っていた。2011年星組公演『ノ…

感想:雪組公演『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』~望海風斗は皇帝だった~

2020年の一作目に、宝塚歌劇団はとんでもないものをぶつけてきた。宝塚らしさと宝塚らしくない要素を兼ね備えたその作品は、トップスター望海風斗の代名詞となるだろう。それが『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』である。およそ一年前の公演『ファントム』は、…

2016年花組公演『金色の砂漠』~明日海りお×上田久美子の美しい世界~

明日海りおというトップスターの魅力は何だろう。得も言われぬ麗しさ、安定感のある歌唱、相手役を包み込む懐の深さ…。そのすべてが唯一無二のものだが、明日海りおの最も突出した魅力は、表現力にあると私は思っている。演技力だけではない、スタイリングも…