感情の揺れ方

それでも笑っていたい

2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年を振り返って

命の果てに至るまで、誰をも幸福と呼ぶなかれ 2023年を振り返るとは言うものの、やはり何も為すことがなかったという一言に尽きる。愛するものを愛し続けるために、血を流さなければならなくなった。Twitterはやめた。人よりも努力をすることが悪徳と見なさ…

感想:月組公演『DEATH TAKES A HOLIDAY』

「苦しまなければいいということでもないのが厄介ですな。 苦しみを知らずに愛を知るということができるでしょうか」 ──ダリオ・アルビオーネ男爵 東急シアターオーブで上演された月組公演『DEATH TAKES A HOLIDAY』は、アルバート・ガゼーラ氏による戯曲を…

映画評:是枝裕和監督作『怪物』

坂元裕二がまさか世界的な評価を得ることになるとは思ってもみなかった。カンヌで賞を取るより前から、是枝監督が坂元脚本で映画を撮るということで気になっていたこの『怪物』。ある出来事に関するひとつのシークエンスを三つの視点──親・教師・子供の視点─…

映画評:トッド・フィールド監督作『TAR』

映画の評価が「俳優の演技・映像・演出・設定」だけで決まるとしたら、この『TAR』はまごうことなき傑作だった。そう断言できるほどにケイト・ブランシェットをはじめとした演者のパフォーマンスは素晴らしいものだったし、執拗なほどに徹底した同じモチーフ…

真風涼帆・潤花の退団によせて

ダニー・オーシャン、シャーロック・ホームズ、そしてジェームズ・ボンド。これらの役をたった一人の俳優が、それも「宝塚歌劇のトップスター」として演じるということの重責、そして困難は想像するにあまりあるが、真風涼帆という舞台人は常に最高のパフォ…

感想:宙組公演『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』

真風涼帆・潤花の退団公演があの『007』、しかもあの『カジノ・ロワイヤル』に決まったという知らせを耳にしたときは、一体全体どうなるんだと期待に胸が膨らんだ。ジェームズ・ボンドという、全世界で愛されるキャラクターを、しかもミュージカルで。ショー…

劇評:ジョン・ケアード演出『ジェーン・エア』

ジェーン・エアは引き裂かれている。その内に「分裂」を抱えている。その「分裂」を乗り越え、ジェーンがアイデンティティを手に入れる。それがこのミュージカル『ジェーン・エア』なのだ。 父と母を亡くし、孤児となったとき。伯母のミセス・リードに引き取…

劇評:眞鍋卓嗣演出『ドリームガールズ』

「名曲がひとつでもあればミュージカルは名作となる」なんて言説があるけれど、この作品にその格言は当てはまらないようだった。『ドリームガールズ』。トニー賞やグラミー賞を受賞した大ヒットミュージカルで、日本では2006年にビヨンセが主演した映画版の…