感情の揺れ方

それでも笑っていたい

劇評

2019年星組公演『アルジェの男』─柴田侑宏の人間賛歌と、それに応える礼真琴─

野望に生きたジュリアン・クレールは最後に愛を知ることが出来たのかもしれない。しかし、友情を知ることは最後までなかった。 柴田侑宏作『アルジェの男』は1974年に初演、以来1983年と2011にも再演、2019年には礼真琴を主演に据え星組で上演された。物語は…

2018年花組公演『ポーの一族』~「極上の美」はそこにある~

『極上の美 永遠の命 底知れぬ恐怖 知りえぬナゾ 伝説の中に 青い霧と たそがれと闇の中に しとどおちる血と 冷たい指と ほほえみの中に 霧の森の奥深く バラ咲き乱れる苑に住む 我らは一族 時を止め 生き続ける 我らは一族 ポーの一族』 目の前の人間が本当…

ルイジ・ルキーニは「信頼できない語り手」か?~2014年花組公演ミュージカル『エリザベート─愛と死の輪舞─』より~

信頼できない語り手(しんらいできないかたりて、信用できない語り手、英語: Unreliable narrator)は、小説や映画などで物語を進める手法の一つ(叙述トリックの一種)で、語り手(ナレーター、語り部)の信頼性を著しく低いものにすることにより、読者や観…

2018年月組公演『THE LAST PARTY~S.Fitzgerald's last day~フィッツジェラルド最後の一日』─月城かなとの持つ細やかさ─

1920年代アメリカ、狂乱のジャズ・エイジ。人々は歌い、踊り、不可能など存在しないかに思われた栄光の時代。その象徴として生き、挫折を背負いながら死んでいったスコット・フィッツジェラルド。そんな彼の波乱に満ちた人生を描くのが、植田景子作・演出の…

2017年宙組公演『神々の土地~ロマノフたちの黄昏~』─サヨナラ朝夏まなと─

朝夏まなとは、本当に演技の上手い男役だったと思う。それも何と言えば良いのか、あらゆる役柄を「宝塚の男役に落とし込む」のが上手い男役だった。トップスター就任以降、『王家に捧ぐ歌』のラダメス、『シェイクスピア』のウィリアム、『エリザベート』の…

劇評:ミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ』

虹色のシャボン玉 宇宙(ソラ)まで飛ばそう 虹色のシャボン玉 宇宙(ソラ)まで飛ばそう 咲妃みゆという役者の力を侮っていたかもしれない。彼女のことはもちろん宝塚時代から知っていたし、月組公演『春の雪』や『THE MERRY WIDOW』でのパフォーマンスや、雪組…

劇評:ミュージカル『天使にラブソングを~シスター・アクト~』

『天使にラブソングを』と言えば、もはや説明するまでもないかもしれない。ウーピー・ゴールドバーグ主演で1992年に公開された、あのハリウッド映画である。この作品が初めてミュージカル化されたのは2006年のアメリカで、日本での初演は山田和也を演出に迎…

劇評:『ファントム』~城田優の意欲作~

「もうひとつの『オペラ座の怪人』」と称されることもあるこのミュージカル『ファントム』はガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』を原作に、アーサー・コピットが脚本、モーリー・イェストンが作詞作曲を担当している。日本では2004年に宝塚歌劇団宙組…

劇評『けむりの軍団』

嘘が嘘を呼ぶ、嘘つきだらけの戦国に、侍がつらぬく矜持とは何か。『けむりの軍団』は39年目を迎える劇団新感線の新作公演で、主演は久々と言ってもいい古田新太。「嘘つきは、侍の始まり」というキャッチコピーが表すように、この作品では「嘘」が鍵を握る…

劇評:『ラ・マンチャの男』

『ドン・キホーテ』。スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスによる小説。誰もが知っているであろうこの作品を舞台化したのがデール・ワッサーマン。タイトルは『ラ・マンチャの男』。1965年にオフ・ブロードウェイで初演されたこの作品は、1969年に日本で…

劇評:『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』

亡霊とは何か…。あるいは、亡霊とは誰か?荒野をさまよう亡霊の正体は、亡霊を見る人間の正体は。アレクシス・ケイ・キャンベル作、上村聡史演出のこの作品は、1937年12月のイギリス、ヨークシャー州を舞台に、第二次大戦前夜の仄暗いイギリスと現代日本との…

劇評:ミュージカル『PIPPIN』

エンタメの洪水だ。1972年のブロードウェイで初演されたこのミュージカルは2013年にも再演され、トニー賞を受賞している。その日本初演が今回の公演で、主演は城田優、物語の鍵を握る「リーディングプレイヤー」を演じるのはクリスタル・ケイ。彼女はこの『P…

劇評:『HAMLET ハムレット』

まず初めに断っておくと、私はこのエントリーで「シェイクスピアの『HAMLET』の批評」をするつもりはない。私が観たのはあくまでもサイモン・ゴドウィン演出、岡田将生主演の『HAMLET』であり、突き詰めれば「シェイクスピアの『HAMLET』」ではないからだ。…

劇評:ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

4月の頭に、梅田芸術劇場で『ロミオ&ジュリエット』を観劇した。このミュージカルは2001年、作曲家ジェラール・プレスギュルヴィックの手によって誕生し、日本では2010年に小池修一郎の潤色・演出で宝塚歌劇団が初演を行った。それ以降も2011年、2012年、20…

劇評:ミュージカル『笑う男』

貴族と貧民。公爵と道化。楽園と地獄。現実的な男と夢見がちな男。トサカ頭とぶたっ鼻。あるいは、笑う男と…。 ヴィクトル・ユゴー原作、脚本ロバート・ヨハンソン、作曲フランク・ワイルドホーン、演出上田一豪によるこの物語を貫くのは、調和としての円、…

劇評:『唐版 風の又三郎』

3月の上旬に、森ノ宮ピロティホールで『唐版 風の又三郎』を観劇した。しかし、私にはこの作品を評価することが出来ない。それは例えばアマゾンで買った商品に星をひとつだけつけるとか、そういうことではない。文字通り評価が出来ないのだ。何と言えば良い…

劇評:ミュージカル『キューティ・ブロンド』

もう2ヶ月ほど前になるが、梅田芸術劇場でミュージカル『キューティ・ブロンド』を観劇した。もともとはハリウッド映画をミュージカル化したもので、日本での初演は2017年。その時からかなり評判が良く、もし再演があるなら観に行きたいと思っていた作品であ…

劇評:劇団四季『オペラ座の怪人』

「劇団四季の『オペラ座の怪人』はすごいらしい」というキャッチコピーでお馴染みの作品を鑑賞してきました。名曲がひとつでもあればそのミュージカルは名作になるという言葉がありますが、この『オペラ座』は名曲にあふれていて、観た人の感情を揺さぶる力…

劇評:『笑の大学』 脚本三谷幸喜 ※軽いネタバレあり

大学で取っている講義の一環で三谷幸喜が脚本の『笑いの大学』を鑑賞しました。映画版やら舞台版やらあるらしいんですが、僕が観たのは舞台版です。とても良い作品でした。劇評を書いてみたのでよろしければ読んでみてください。 面白い。本当に面白い作品だ…