感情の揺れ方

それでも笑っていたい

感想:雪組公演『CITY HUNTER─盗まれたXYZ─/Fire Fever!』

 雪組新トップコンビ彩風咲奈・朝月希和の大劇場お披露目公演が幕を開けている。演目は『CITY HUNTER』で、「あの『シティーハンター』を!?」と驚いたファンも少なくないだろう。もちろん私もその一人で、正直なところ一体どこをどうやってあの世界を舞台に、しかも宝塚の舞台上に再現するのだろうと不安なところもあったのだが、そこはさすがの宝塚という仕上がりだった。考えてみれば雪組早霧せいな・咲妃みゆの時代に『ルパン三世』『るろうに剣心』を見事に成功させていて、両作品を経験している組子も多い。漫画原作を宝塚歌劇に昇華させるノウハウのようなものが組のカラーとして受け継がれているのだろう。そうでなくとも、宝塚歌劇団の存在を世に知らしめたのは『ベルサイユのばら』なのだ。彩風咲奈は冴羽獠を演じるにあたって今までのイメージとは全く違う立ち姿をしっかりと示していたし、遅咲きのトップ娘役と言ってもいい朝月希和が槇村香として見せたパフォーマンスは流石の一言。重要な役どころを担うミックを演じた朝美絢は貫禄を感じさせるようになり、二番手として一切の不安なし。縣千や彩海せら、眞ノ宮るいといった若手も存在感を見せつつあり、望海風斗・真彩希帆という屈指のトップコンビが去った後も組全体の充実ぶり感じさせる公演だった。

   

 二本目のショー『Fire Fever!』は稲葉太地氏によるダンス・ショー。彩風咲奈と朝月希和の魅力はなんといっても洗練されたダンスだろう。2人の魅力を前面に押し出したこのショーは今までの、具体的に言えば前トップコンビが中心に立っていたころのショーとは全く違う雰囲気に満ちている。ダンス、ダンス、ダンス!タカラジェンヌたちの躍動する肉体をこれでもかと楽しむことの出来る、タイトルにふさわしい作品だった。特に圧巻だったのは出演者全員によるラインダンス。感染症の影響で組子全員が舞台に立つことが叶わなかった時期を経た、まさしく燃えるようなパフォーマンスの数々。宙組公演『デリシュー』に引き続き、宝塚のレビューはこうではなくては!と思わずにはいられなかった。フィナーレに続く、若手を中心とした組子が次々とダンスを繋いでいく場面も印象に残っている。これからの雪組を期待させる、素晴らしいショーだった。