感情の揺れ方

それでも笑っていたい

感想:『仙名彩世サロンコンサート』

 さる11月3日、新型感染症の流行を受けて延期されていた「仙名彩世 サロンコンサート」が宝塚ホテルで開催された。本来は8月の開催だったこのコンサートが、およそ3ヶ月経って無事に開催されたことがまず嬉しく、同時にさまざまな苦労を重ねていただいた出演者、関係者の方への感謝でいっぱいである。2019年に宝塚歌劇団を退団されてから、舞台を中心に精力的な活動を続けている仙名彩世さんだが、個人としては2020年に上演された『シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ』以来となる「生仙名彩世」だった。『ミス・サイゴン』は東京と大阪両方のチケットを確保していたのだが……。好転しつつある事態がこのまま多くの人を救う方向に進んでくれることを願ってやまない。

 話をコンサートの感想に戻すと、「光在る……」の一言に尽きる。花組トップ娘役として活躍し、今現在「トップ娘役」に対するひとつの大きな流れを作った彼女の現在地とこれからの行く先を示すかのようなプログラムだった。詳細な曲目は伏せるが、ジブリシリーズの主題歌などのポップスや出演作からのナンバー、有名ミュージカルやディズニー作品の名曲などの多彩なジャンルを歌いこなす姿はまさしく「仙名彩世」というひとりの舞台人であり、素晴らしいパフォーマンスだった。

 ディナーショー(私はランチショー)だったため、ショーが始まる前には食事の時間があったが、そのメニューには彼女の出身地である宮城県の食材が多く使われていて、在団中から彼女が大事にしていた「自分が宮城県出身であることへの思い」が感じられた。自らのルーツと経験とを決してないがしろにしない仙名彩世という人間の姿勢に頭が下がる。食事、ショーともに素晴らしく、非常に有意義な時間だった。またこのような機会があれば、それほど嬉しいことはない。

 蛇足にはなりますが、会場に展示されていたミニチュアフードの数々は「ガチ」のクオリティでした。そしてノンアルコールのオリジナルカクテルは宮城県の名物である「ずんだシロップ」をベースにしたもので……2021年口にしたものの中でもっともインパクトのある飲み物でした。「飲む枝豆」とでも言うべきあのカクテル。私のテーブル周辺に座っていた人はみんな飲んだ瞬間に笑っていたような気がします。