感情の揺れ方

それでも笑っていたい

金子茂樹脚本『コントが始まる』第1話

 『花束みたいな恋をした』のヒットが記憶に新しい菅田将暉有村架純のコンビを主演に迎え、金子茂樹が脚本を務めるドラマ『コントが始まる』の放送が開始された。コントが、始まった。

このドラマは毎話、一本の『ショートコント』から幕を開ける。それはある売れないトリオによる、取り留めのないショートコント……。しかし実はそのコント、 後に起きる53分の物語の「前フリ」だった!!

  公式ホームページにあるあまりにも丁寧なこの文言の通り、物語は「マクベス」という売れないトリオによるコントライブから始まる。第1話におけるそれは「水のトラブル」というタイトルを冠したコントであり、内容は「業者が水のトラブルで訪れたラーメン屋には、触れた『水』をすべてメロンソーダに変えてしまう店員がいた」というもの。「触れたものを変えてしまう」をテーマに、第1話では登場人物に起きるさまざまな「変化」が描かれる。そしてそこにはいつも「容器に入った水」がある。

 中華料理屋で「マクベス」を結成したときのテーブルにはラーメンと水の入ったコップ。ネタを作っているファミレスではホットコーヒー。マクベスがコンビからトリオになった居酒屋。高岩春斗(菅田将暉)と中浜里穂子(有村架純)が出会った公演のベンチにはペットボトルの水、缶ビール。そして「容器に入った水」はすなわちマクベスの3人であり、3人が解散を決めた福岡のラーメン屋で、3度替え玉をしたラーメンのスープはもうほとんどなくなっていたのではないだろうか。

 「あふれ出てしまう」あるいは「こぼれ落ちてしまう」ような登場人物たちの、どうしようもない変化の流れは、移動する場面の多さによっても描かれている。橋を渡ってスーパーに買い物へ行き、マクベスは車で東京から福岡へと最後の旅に出る。もうそこにはいられないのだという、確信めいた予感。変化の行き先はメロンソーダか、レモンスカッシュか。