感情の揺れ方

それでも笑っていたい

浜田秀哉脚本『コントが始まる』第2話

 第2話冒頭のショートコントは「屋上」。新居に引っ越してきた春斗(菅田将暉)と潤平(仲野太賀)の夫婦がベランダに出ると、向かいのビルの屋上から飛び降りようとする瞬太(神木隆之介)を見つける……というもの。

 ──新たな生活の始まりに自殺と遭遇する。第2話において、「屋上」は「始まりと終わりが交差する場所」として描かれている。「10年やって売れなかったら解散する」という制約のもと始まったマクベス。それぞれのメンバーはその10年、つまりは解散を前に始まりを振り返る。マクベスの始まりは、高校時代の文化祭だった。潤平が春斗を誘って体育館のステージでコントを披露し、春斗は「二人で本気でコントをやろう」と潤平に声をかけた。春斗は、「潤平しかいない」と思っていたのだろう。しかし、潤平は違った。潤平がコントを文化祭でコントをやろうと思ったのは、片思い相手の岸倉奈津美(芳根京子)に振り向いて欲しいからだった。そもそも、春斗は潤平にとって三人目だった。潤平はまず瞬太に声をかけたが断られ、別の人物にも断られ、最後に春斗を誘っていたのだ。そして、春斗はそのことを知らなかった。潤平には潤平のうしろめたさが。春斗には春斗のうしろめたさが、ある。こういう「うしろめたさ」、あるいは「他者に対する拒否感」みたいなものをすくい上げるのが上手い。自分たちのファンであるという里穂子に対する春斗の対応や、瞬太のバイト先の店長に対する苛立ち。ぶつかり合っているようで、どこまでも遠回りしていくコミュニケーション。コミュニケーションを遠回りさせているのはおそらく、マクベスのそれぞれが胸に抱く「後悔」だろう。  

 この第2話は、マクベスの三人による、それぞれの始まりたる「文化祭」つまり「過去」への巡礼が大きなテーマとなっている。自分の人生を誰かになすりつけ、それでも、それでもひとりではいられない春斗・潤平・瞬太。瞬太の自殺騒動を経て、マクベスはそれぞれの10年間と向き合い終えた。自分と春斗・潤平の間に横たわる大きな溝を越えて、瞬太がふたりのいる場所へ飛び込んでいくコント「屋上」は、マクベスの歴史そのものだった。