感情の揺れ方

それでも笑っていたい

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』

 『ジョン・ウィック』に続いて、こちらの『ジョン・ウィック2』も大好きな雰囲気の映画だった。前作は今までのノワール映画、あるいはアクション映画とはひと味違う外連味にあふれた仕上がりだったが今作もそれと違わぬ、いやむしろハッタリの効かせ方が別方向からのものになっていて、非常に良かった。

 ウィキペディアを見てみると、今作のジャンルは「ネオ・ノワール・アクション・スリラー」となっていて、なるほどそう言われてみるとその通りな雰囲気だ。「ネオ・ノワール」というのが好き。前作のアプローチがジョンという人物の土台や世界観の説明をする際にハッタリを効かせていた(ジョンを誰もが知っていること、「ホテル・コンチネンタル」での仕事は厳禁など)のに対し、チャプター2では「数」そして「場」を前面に押し出した演出がなされている。まず殺しの舞台についてだが、前作ではジョンの家やクラブ、港など言うなれば日常生活の延長に近い場所がほとんどだったが、今作ではローマ時代の遺跡のど真ん中、現代美術館の鏡を使った展示内など、分かりやすく視覚に訴えかける舞台が多かったように思う。もちろん地下鉄の車内や街角など、まさしく日常生活のただなかで殺し合うシーンもあったし、そのシーンもキッチュな雰囲気で好きだった。次に「数」。これはなんというか、「ジョンを狙う殺し屋の数」である。冒頭の場面からドンドン人が死んでいたし、ローマでもめちゃくちゃな数の人が死んでけれど、やはりハイライトはニューヨークに戻ったジョンの命を狙う殺し屋の数だろう。サンティーノ(引退したジョンに依頼を断られ、その場で家を爆破するイタリア人)が彼のかけた賞金は700万ドルで、その旨が組織に登録している殺し屋の携帯に一斉送信されるのだが、もうびっくりするくらい街中に殺し屋が溢れている。清掃員、ホームレス、路上のバイオリン弾き、力士みたいなチンピラ。たぶんあの世界にいる人間のほとんどは殺し屋なんだと思う。駅でジョンとカシアン(サンティーノの姉を警護していた、案の定ジョンの知り合い)が打ち合っているときもびっくりするくらいみんな平然としていたし。いくらサイレンサーがついているとはいえ、目の前の壁にいきなり穴が開いたらもうちょっと反応するんじゃないか。「数の強さ」を押してくるところはもうひとつあって、ニューヨークで行き場のないジョンは地下犯罪組織の王であるキングという男を頼るのだが、その組織もめちゃくちゃ巨大なのである。大企業。ニューヨークのホームレスは全員あの組織に入っているのだろう。大量の伝書鳩が画面を埋め尽くすシーンも、「数の強さ」を感じさせる。

 もう復讐というか、「俺の邪魔をするやつは全員殺す」というルールだけで動くババヤガことジョン・ウィック。超人みたいな強さで本当に全員を殺していくキアヌ・リーヴスを堪能出来て、非常に良かったです。