感情の揺れ方

それでも笑っていたい

映画「ジョンウィック:パラベラム」

  最強の殺し屋、ババヤガことジョン・ウィックが暴れ回るシリーズの三作目『ジョン・ウィック パラベラム』。第一作目では「外連味」と「ハッタリ」を、第二作では「数」と「場」を前面に押し出した演出になっていたが、今作の目玉は「殺し方の変化」ではないだろうか。今までにないバイクアクション、そして乗馬シーン(!)。主人公のジョン・ウィックはおそらく馬車を曳くために育てられているのだろう馬を巧みに操って敵から逃亡し、果てにはその馬を使って敵を処理する。今作で動物と共闘するのはジョンだけではない。ニューヨークから逃亡した先のモロッコで再開したソフィア(ハル・ベリー)は二匹の猟犬とともに大量の敵を処理していく。ジョンとソフィア、二匹の猟犬によるアクションシーンはとても面白く、シリーズの新たな一面を見ることが出来たように思う。考えてみればシリーズを通してジョンと愛犬との交流は作品の中心にあったわけで、ジョンの飼い犬あるいはジョンとともに闘うというわけではないにしても、そのようなシーンが描かれたことは画期的だ。飼い犬を殺されて報復に打って出ようとするソフィアをジョンが止めようとするシーンにはすこし笑ってしまった。もともとこのシリーズはお前が犬を殺されたところから始まっているじゃないか、という。

 もうひとつ注目したいのは、タイトルにもある「パラベラム」というワードだ。この言葉はラテン語の警句「Si vis pacem, para bellum」の後段に由来している。「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」という意味を持つこの警句は、そのままジョン・ウィックという人間を表しているような気がしてならない。最強の殺し屋として名を馳せながらも愛する人のために引退、しかしその人を亡くし、忘れ形見の愛犬を殺され、また闇の中に舞い戻る。派手なアクションシーンの詰め合わせで忘れてしまいそうだが、ジョンの望みは愛犬とともに過ごす平和な日常なのだ。それは第一作から変わらない。ジョンは平和に暮らすために戦っている。しかし、どれだけ戦への備えをしても彼に平和は訪れない。主席連合の首長に自らの左手薬指と指輪を差し出すシーンは象徴的だ。ラストシーンを見るにこのシリーズはまだまだ続きそうだが、次回作ではさらに暴れ回るキアヌ・リーヴスを見ることが出来そうで、期待が膨らんでいる。

 

 

ジョン・ウィック:パラベラム(字幕版)

ジョン・ウィック:パラベラム(字幕版)

  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: Prime Video