感情の揺れ方

それでも笑っていたい

ライブレポ :七海ひろき One-man LIVE『773 GALAXY』

 七海ひろきが宝塚歌劇団を退団してからもう5ヶ月が経つ。彼、いや彼女が退団後も活動を続けてくれるのかという不安は、私だけが抱いていたものではなかっただろう。およそ400人という組子を誇る宝塚歌劇団にあって、退団後も精力的に芸能活動を続ける組子はそう多くはない。彼女は男役だったけれど、特に元娘役は完全に表舞台から姿を消すということも決して珍しいことではないのだ。

 そういう状況にあって、七海ひろきが退団後まもなく活動を再開するというニュースは私の心を躍らせた。しかもCDデビュー、ワンマンライブの開催と、吉報は連続した。あぁ、良かった。またステージに立つ七海ひろきが見られる。もう「男役 七海ひろき」を見ることは出来ないが活動は続けてくれるのだと、嬉しかった。

 しかし8月25日に大阪のNHKホールで行われたワンマンライブ『773 GALAXY』を観て、私は唸った。七海ひろき、そう来たかと。”ひろきのお兄様”こと七海ひろき、全然変わってないじゃないかと、唸った。宝塚を退団する以上、男役からは卒業しなければならない。もちろんそれは娘役も全く同じだが。ところが七海ひろきはそこに別方向からの解答を示してみせた。なんというか、七海ひろきは「王子様」のままだったのだ。もはや語り草となっている、退団公演『霧深きエルベのほとり』東京公演千秋楽の劇場入りで見せた真っ白なタキシードの花婿スタイルは健在だった。もちろん「宝塚の男役」とは違うけれど、七海ひろきは「かっこいい」ままだったし、これまたなんというか「七海ひろきは七海ひろきのまま」だったのである。ライブ中、随所に挟まれるMCはスカイステージの番組で時折見せていたあのお茶目な雰囲気を保っていて、これもまたファンとしては嬉しかった。

 ライブはミニアルバム『GALAXY』に収録されている楽曲を中心に、尾崎豊槇原敬之、そして退団公演でも歌っていた平井堅の『POPSTAR』などアンコールを含めて全15曲、およそ2時間にわたる内容だった。宝塚時代からのファンとしては、やはり客席とのコール&レスポンスやMCでの客席とのやりとりが新鮮だった。観客の声を丁寧に拾っていく姿に、七海ひろきのスタイルが見えたような気がする。ライブ中盤には元花組の天真みちる作・演出の朗読劇も披露された。相手役には元星組の妃白ゆあが登場。両者の現役時代には見られなかったコンビで、客席は盛り上がっていたように思う。そして何と言っても、七海ひろきの滝行に密着した映像はファン必見だろう。詳細は避ける、詳細と言っても本当に七海ひろきが滝行をしている映像なのだが、気になる人はめちゃくちゃ気になるだろうなと思う。実際に見た者感想だが、一晩経ってもまだ咀嚼出来ていないような感覚だ。やはりすることが普通と違うぞ、七海ひろき。

 全体としては、「七海ひろき」が帰ってきたぞという印象。そして繰り返しにはなるが、七海ひろきは七海ひろきのままだった。これからの活動にも注目していきたい。

 最後に、ライブのセットリストは以下のニュース記事に詳しく掲載されています。

news.dwango.jp