感情の揺れ方

それでも笑っていたい

2泊3日東京旅行~宝塚やらコミケやらコスホリやら~

 8/10日から8/12日までの3日間、東京を旅行した。主な目的はコミックマーケット96へのサークル参加で、そこだけを切り取れば旅行というよりは本を売りに行ったということになるのだが、せっかく東京に行くのだからと旅程を伸ばして色々なイベントに足を運んだのである。この3日間がとても楽しくて、高揚して、感情がめまぐるしく動きまわったので、どうしても記録に残しておきたいと思ったことがこのエントリーを書くに至った理由だ。散らかった文章になることが予想されるが、読んでいただければ幸いである。

 

初日、8/10

 8/10日、土曜日。東京に出発する朝だ。朝と言っても新幹線の時間は10時なので、そこまで早い起床ではないけれど。だいたい最寄り駅を9時くらいに出発して、京都駅へ向かう。下りの琵琶湖線石山駅の手前で、景色がとても綺麗に見えるポイントがある。瀬田川にかかった橋の上を電車が通るタイミングで車窓に目をやると、穏やかな川とその奥に広がる大きな琵琶湖が視界に満ちるのだ。私はこの景色を見ると、いろいろなことを思う。今は下りに乗っていて、これからいざ東京というタイミングなので、さらば琵琶湖よと心の中でつぶやいたりした。すぐに帰ってくるじゃないかというのはナシの方向で。京都駅に着くと、やはりいつもより人が多い気がした。そういう時期だ。いつものように新幹線ホームに移動する。たった一か月とすこし前までは、3日間で2度新幹線に乗って東京と京都を往復していたのだが、それも今では遠い昔のような感覚だ。就活はすべて上手くいかなかったけれど、なんだかんだで最近の生活は充実している。自分で自分の身を立てられているわけではないが、色々なことが徐々に動き出している感覚はあるのだ。土を耕し、種を蒔く。すべては未来のために。やり方はいくらでもある。スマートEXは便利だなと思いながら、自分の席に座る。東京までの時間は、携帯でアマゾンプライムを見ながら過ごす。たまっていた『鬼滅の刃』を一気に見ていく。ワイヤレスのイヤフォンを繋いでずっとプライムを見ていると、面白いくらいの勢いで充電が減っていく。こんなに減るのかい、というくらいの勢い。こんなに減るのかい。新幹線の座席は窓際が空いていても基本的に通路側の座席を取る。トイレに行くときに、そこに人が座っているとそれだけで神経が磨り減ってしまうから。そういう事情があって、基本的に車内から富士山を眺めることが出来ない。だからなんだと言われてしまえばそれまでだが。東京駅に到着したのは正午過ぎ。駅に着く前、「ホームが混雑しているため前よりの車両から降りてください」 というアナウンスが入った。初めて聞くアナウンスだったので、そんなに?と思いながらも指示通りに前よりの車両から降りたら、本当にすごかった。ホームが人でパンパン。まさしく帰省ラッシュ。テレビのニュースでやるやつだと思いながら、丸の内の出口へ歩いて行く。世間の流れとは逆方向に進む男が東京駅に降り立った。特徴的なレンガ造りの駅舎を横目に見ながら、真っすぐKITTEへ向かう。この旅の目的のひとつ、「宝塚歌劇を彩るオフィシャルグッズ展」のために。

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大きな吹き抜けの一階で行われていた

 やはりというか、来ている人のほとんどは女性だった。大劇場での男女比と変わらないくらいの雰囲気。東京に滞在する期間とこのイベントの期間がかぶっていたのはラッキーだった。各組現トップスターの大きな写真パネルと、歴代のトップスターがプロデュースしたオフィシャルグッズが展示されていた。それに、今までのDVDやBlu-ray のジャケットがズラリと並べられ、特別コラボグッズの販売ブースが設置されていた。全体的にこじんまりとした展示ではあったが、じっくり見学していると30分以上楽しめた。スカイステージやかんぽ生命のスタッフさんも常駐していて、勧誘をしたり説明をしていたり。スカイステージのお兄さんに声をかけられたが、「もう入ってるんです」と断る。かんぽ生命のスタッフさんからは望海風斗さんのクリアファイルをもらった。やった。歴代トップスターのオフィシャルグッズはどれも個性的で面白かった。キャプションされている、そのグッズのモチーフになったものがどこかシュールなのだ。朝海ひかるさんの「天使Ⅰ/天使Ⅱ」とか、霧矢大夢さんの「空飛ぶ乗り物」とか。単語が広い。全然間違ってはいないけれど。

 

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花組のフォトパネル

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月組のフォトパネル

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雪組

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星組

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宙組

 一体誰が一緒に撮れるんだよというパネルたち。前回のKITTEと歌劇のコラボ展示の顔だしパネルもめちゃくちゃ難易度が高かったような気がする。宝塚、そういうところがあるな。展示を堪能したらぼちぼちの時間になったので、お昼ご飯を食べることにする。せっかく来ているし、ここから食事のために移動するにも微妙な時間帯だったので、KITTEで食べていこうとレストランフロアをぶらつく。最初に目に付いたのはなんだかものすごい行列が出来ているお店で、前まで行ってみると回転寿司だった。根室花まる。すごいなーと思いながら受付の機械を見ると待ち時間がなんと180分。ユニバかよ。ユニバか?ここは。お寿司を流しているレーンはフェイクで実は席に座るとハリーポッターの世界を楽しめるのか?なんだ?フロアマップを見たときはお寿司食べたいなーと思ったけれど、さすがにちょっと無理な時間だ。遅めの昼ごはんが早めの夜ご飯になってしまう。そのままフロアをぶらぶらと回る。へぇ、豚捨ってこんなところにお店出してるんだーなんて考えたり、東京のトンカツか…と悩んだりして、結局地下一階にある「ラーメン激戦区 東京・丸の内」に移動した。就活の思い出が脳裏をかすめたものの、気づかないフリをしてお店を選ぶ。一幸舎は京都にある…富田は前に食べた…など色々考えた結果、ワンタン麺に魅かれて「中華そば 福味」に入った。好きな食べ物ランキング上位に食い込んで来る食べ物、ワンタン麺。タイミングが良かったのか思っていたよりも待たずに座ることが出来た。ラーメンが来るのも早く、ありがたい。

 

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ワンタン麺

 記念すべき東京一食目。とても優しい味の醤油ラーメンで、美味しかった。ワンタンもつるつるで気持ちが良い。完食。チェックインにはまだ時間があったが、とりあえずホテルの最寄り駅である浜松町に移動する。京浜東北線を使うのか山手線を使うのかという問題があるが、調べると次に来る山手線に乗るのが早いようだったのでそれに従った。東京の路線の多さにはいつも驚かされる。こちとら琵琶湖線しかない田舎育ちなので…。浜松町に着いた時点で14時すぎ。チェックインが15時なので、まだすこし時間がある。喫茶店かどこかで時間をつぶそうかなとも思ったが、せっかくなので周辺を散歩することにした。ふと視線を上げると、東京のシンボルである東京タワーが目に入る。なるほどここはその辺りなんだなと合点がいき、なんとなくそちらの方に行先を決めた。昼過ぎの日差しは厳しく、歩いているだけでも大粒の汗が額を流れていく。道々で水分補給をしながら東京タワーへ近づいていくと、なんとなくケルンの街を思い出す。もう4年ほど前になるが、ドイツを旅行したときの最終目的地がケルンだった。あの有名な大聖堂は噂に違わぬ巨大っぷりで、近代的な街の中に大聖堂がドンとそびえつ光景には現実感がなかった。なんというか、目の前にあるのにCGっぽいのだ。景色にフィットしてる感覚がないとでも言えばいいだろうか。東京タワーもそれに近いものがあった。そして気づいたことがある。歩いても歩いても真下に到着しない。入り口がどのあたりかも検討がつかない。大きな道をまだまだいくつも渡らなければいけないのでは?と思ったあたりで歩くのをやめた。さすがにホテルから離れすぎるのと、単純に暑くて疲れたのだ。明日のコミケに向けて体力を温存しておきたかった。というわけで、遠くから写真を撮って、撤退。振り返ってみると、『天気の子』で須賀さんが娘と遊んでいた公園がこの近くなのだろう。聖地巡礼をしておけばよかったかなぁとも思うが、広い観点で考えれば東京旅行そのものが聖地巡礼になっているような気もする。

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何らかの公園。ちょっとした屋台が出ていた

 今回2日間宿泊するホテル、京王プレッソイン浜松町に到着したのがちょうど15時ごろだったので、だいたい一時間くらいは歩いていたことになる。振り返ってみると、なんでこんなことをしたのか分からない。なぜ俺はあんな無駄な時間を…。結構疲れていたので、チェックインしてとりあえずシャワーをする。汗が流れていく感覚が気持ち良い。そのあとは荷物を整理して、すこし寝ることにした。東京のホテルに来てすることが昼寝かいと思うかもしれないが、これには理由がある。夜からまた外出する用事があったのだ。この暑さを一日中動き回るほどの体力はない。休息がいる。なんだかんだ一時間くらい眠ったところで目が覚めた。再びいそいそと用意をして、今度は新宿に向かう。直前まで山手線で行こうと思っていたのだが、大江戸線でも行ける(なんならそっちの方が早い)ことが分かり、地下鉄に乗り込んだ。東京、地下鉄のホームが本当の地下にある。地上から遠すぎやしないか。新宿に行く目的は、RELUMというコンセプトバー。コンセプトカフェかもしれない。いやコンセプトなんたらとは?という疑問にお答えするのはぶっちゃけ面倒なので、各々で調べて欲しい。大好きなコスプレイヤーである「ありかみう」さんが在籍していらっしゃるお店で、普段は会員制で入れもしないのだが、ラッキーなことに新規会員登録を受け付けている期間とこの滞在とがかぶったのだ。行くしかない。お導きだろう。今日は出勤されていなかったけれど、会員証さえ作っておけばこちらのものだ。何がだろう。地下鉄の駅を出て、なんとなくこっちかなという感じで出たところが確実にミスっていた。めちゃくちゃ遠い出口だった。大都会の難しさが身に沁みる。とぼとぼと新宿駅周辺を歩いていると、目に入る景色が都会そのもので、風景と人ごみに酔うような感覚になる。現実の新宿は、新海誠が描くそれほど美しいわけではないのだ。心が折れそうになりながら、RELUMの入っているビルの下に到着。エレベーターで6階まで上がり、ドアの前で精神統一をする。なにせこういう会員制のバーに入ったことがないので、めちゃくちゃ緊張していた。神経が細い。意を決してインターフォンを押し、入店。慣れない雰囲気に戸惑いながらも、楽しくお酒を飲んで一時間ほど過ごした。キャストのみなさんがめちゃくちゃ優しい。コミュニケーション能力の低さを露呈してしまったけれど。また地下鉄に乗って、ホテルに戻ったのが21時前。ホテルの一階にあるナチュラルローソンで夕食と朝食、水分を買い込む。晩御飯として食べたタラコパスタがびっくりするほど薄味で、はんなりしてはるわぁと思いながら食べた。はんなりしてはったわぁ。星野源をゲストに迎えた『嵐にしやがれ』のクイズデスマッチがスウィーツ特集で、そうか東京に住んでいる人はこういう番組を見た次の日にふらっと足を運ぶことが出来るのか、と考えたりした。東京と地方の文化強度格差は大きい。今日着た服を洗っておこうと思ったのだが、ホテル内に設置されている6基のコインランドリーがすべて使用中になっていたので、キレながら明日の準備を済ませ就寝。今優先するべきは睡眠時間を確保することだ。しかし精神が昂っているのか、あまり寝付けず。結局いつもと変わらないような時間になってから寝付いたような記憶がある。

 

2日目、8/11

 5時起床。早い。早いと言っても、始発でビッグサイトに向かう方々と比べればそうでもない。去年の夏と冬のコミケに始発参戦した時は、たしか3時くらいには起きていたような気がする。帯番組のキャスターじゃないんだから。起きてまずコインランドリーに向かった。さすがにもうすべて使用中ということはなかったが、中には洗濯が終わっているのに誰も取りにきていないものもあった。きっと、回し始めてから寝てしまったのだろう。そういうことは誰にでもある。褒められることではないが、糾弾されるようなことでもないだろう。部屋に戻り、シャワーをしてから昨日のうちに買っておいたおにぎりを食べる。熱中症対策にはちゃんとした朝ご飯が必要だ。正直食欲はなかったけれど。部屋に人の声が欲しくてテレビをザッピングしていると、日曜の明け方にやっているのは8割が通販番組で、あとの2割は海外のスポーツ中継だということが分かった。東京に来ると、テレビのチャンネル割に戸惑ってしまう。日テレが4チャンネルにある!と思ってしまう。関西だと日テレは10チャンネルだ。コインランドリーに洗濯物を回収しに行き、部屋干しをする。選択表示には従うタイプの人間こと、私。しっかりと身支度を整えてから、サークル入場の時間に間に合うようにホテルを出発。浜松町ではなく、新橋に向かって。このホテルは新橋と浜松町の間くらいに位置しているので、コミケの宿には便利なのだ。ゆりかもめの新橋駅には、同じ場所を目的地としているのであろう人々があふれていた。座れたのはラッキーだったかもしれない。ゆりかもめの車窓から見える景色は、なんというか都会という感じがして好きだ。マンパワーを感じる。実際のところ埋め立て地(たぶん)をぐるりと一周している路線なのでそこまで景色が移り変わるわけではないが、そこも含めて。東京ビッグサイト駅に到着して、一直線に自分の入るべきサークル入場口に向かう。事前にかなり予習をしていたのが功を奏したのか、特に迷うこともなく自分のスペースにたどり着くことが出来た。ひゃ~これがコミケのサークル参加…と気分が高揚する。机の上に置かれた大量のチラシと2つの椅子を整理して、とりあえず宅配搬入していた荷物を受け取りに行く。無事に届いていたようでほっとする。2本用意していたポップスタンドのひとつが根元から折れるというハプニングに見舞われながらも、ぼちぼちと設営をしながら今回手伝ってくれることになっている先輩の到着を待つ。週間日記によく登場する、東京でマスターをやっているあの先輩だ。方向音痴かつルーズな性格なのでめちゃくちゃ不安だったが、なんとか会場まで来てくれたので本当に安心した。そして、ラコステのポロシャツにサングラスをばっちりキメて来たので、普通に爆笑してしまった。ブレない人だなと思う。私が今回出展したのは西4ホールで、もちろん暑いのは暑いのだが、思っていたほどではなかった。一般参加のときに歩きまわっていた東ホールの地獄を思い出すと、かなり楽だったように感じる。ポップスタンドの件以外はつつがなく設営が終わり、10時を迎えて開場の拍手。新鮮な感覚だ。前までは東の駐車場にいたはずで…。本を書けば並ばずに済むのでは…?コミケ自体はすぐに撤収の時間になってしまったような感覚だが、いろいろな出会いがあった。まず、幼稚園から中学までの同級生がスペースまで来て本を手に取ってくれたのだ。成人式以来の再会だった。社会人になってから太ったらしく、ガリガリだったころの面影はなかったが、雰囲気は変わっていなかった。なんというか、めちゃくちゃ嬉しかった。コミケには他の目的で来ていたのだが、なんとなく思い出して足を運んでくれたらしい。額に滲む汗が激戦を物語っていた。3日目の過酷さは歴史に残るだろう。それからはフォロワーさんが来てくれたり、本当にその場で見て手に取ってくれる人がいたりした。どこの誰かも分からない人間が書いた本を、ふらっと来た人が持って行ってくれる。すごい話だ。何度経験しても新鮮に感動してしまう。こんなに嬉しいことがあるか?本当に嬉しい。何回でも言う。本当に嬉しい。自分の活動が誰かに届くことの尊さよ。一日を通して体調が悪くなることはなかったが、一番苦労したのは最後の宅配搬出だった。ゆうパックスマホ割で清算もラベル貼りも事前に済ませておいたが、結局一時間ほどかかってしまった。これはきつい。撤収をもう少し早めるのが良いのかもしれない。そしてなんとなくの雑感だが、コミケに長編のオリジナル小説は向いていないような気がする。コミケに来る人は「これを買う」という明確な目的を持って来場しているので、「ブースを流し見して気になるものがあったら買う」という人はほとんどいないのではないだろうか。結果的に、買うにしても分厚い長編ではなく薄めの短編や短編集、ということになっているんじゃないだろうか。実際、今回の参加ではけたのはほとんどが新刊の短編集だった。これからは文フリやコミティアを中心にするのが良いのかもしれない。先輩とは現地で解散をして、私はゆりかもめに揺られながらホテルへ戻った。あと、折れていない方のポップスタンドも撤収のときに根本から折ってしまった。ニンゲン ノ モノ モロイ…。今度からはおとなしく借りようと思う。

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帰りがけのビッグサイト

 結局お昼を食べられていなかったので、新橋駅に到着してそのまま事前に調べておいたラーメン店「新橋 纏」に行き、夕食をとる。開店直後に到着したのだが、二巡目だった。人気店のすごさ。注文したのは「特製烏賊干鶏白湯醤油そば」とライス。烏賊干しを使った珍しいラーメンだ。スープを飲んでみると、確かに烏賊の風味を感じるが前に前に出てくるわけではなく、全体的にとてもバランスが良い。麺、鶏チャーシューも美味しく、あっという間に食べてしまった。

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特製烏賊干鶏白湯醤油そば。具にもイカゲソがある

 ホクホク気分でホテルに戻り、とりあえずお風呂に入る。道中のコンビニで買ったビールを飲みながら「イッテQ」を見ていると、なんだかめちゃくちゃ楽しい。考えてみれば一人旅で同じホテルに連泊するというのは今回が初めてなのだが、非日常が続いている感覚がする。めちゃくちゃ楽しいな、連泊。やり始めたらハマってしまいそうなのでまだ手を付けられていないもののひとつ、一人旅。すっかり疲れていたせいかあまり眠れず、短い夢を見て30分くらいで目が覚めるというのを繰り返す。その都度水分を摂って眠りなおしていたら、最終的には失神するように寝たらしい。その辺りの記憶はあいまいだ。

 

3日目、8/12

 寝る前に一応設定しておいたアラームで目が覚める。夢を見た記憶が一切なかった。かなり疲れていたのだろう。体感的には一瞬だ。こういう睡眠ではあまり疲れが取れない。カーテンを上げると、昨日までと同じような晴天…とはいかず、すこし曇っていた。雨が降るのかもしれない。とりあえずシャワーをして、軽く身支度を整える。まずは朝ご飯ということで、ホテルの一階にある朝食会場に向かう。あまり旅先で朝からがっつり食べるのもなと思い、軽めに済ませた。スープバーがあるのが嬉しい。基本的にいつでも汁物が欲しい性分なのだ。混みあう時間帯だったので、そそくさと部屋に戻った。チェックアウトの時間が11時だったので、ギリギリまでゆっくりする。この後の待ち合わせが14時なので、なるべく体力を使いたくない。昨日の疲れも残っていて、HPゲージが全く回復していない感覚がある。足に関しては絶不調だ。テレビを高校野球に合わせ、音量を小さくする。それをBGMにしながら、ベッドに横になって目を閉じる。眠らないまでも、なんとなくスッキリするような感覚だ。どちらかと言えば、瞑想に近いかもしれない。人間あるある、縦より横の方が楽。そうこうしているうちに結構な時間になったので、慌てて荷物を整理して、今度はしっかりと身支度を整えて出発する。リュックサックがめちゃくちゃ重い。肩がちぎれそうだ。体がその重さに慣れてくれることを祈るばかり。いざ浜松町駅へ。ぶらぶらと歩いているときに、この辺りは御池に似ているなと思った。京都の中心からすこし北にある、御池通。オフィス街だが、昔からそこにある人間の生活も確かに感じられる。昼も夜も、平日も週末も、一定の人がそこで営みをしているような、そんな雰囲気。良い街だと思う。こんなに高いビルは、御池にはないけれど。そんなことを考えていると、雨がぱらつき出した。起き抜けの予想が当たってしまった形だ。すこしでも荷物を減らすために折り畳み傘は持ってきていなかったが、降っていないと強く思えば降っていないくらいの雨だったのでなんとかなった。駅について、山手線で東京駅へ。到着して、初日と同じようにまたKITTEへ向かう。こちらでも雨が降ったようで、外に出ると地面が濡れていた。東京駅周辺で時間をつぶせるところを探していたら、ここの2階と3階にある東京大学の博物館、通称「インターメディアテク」がヒットしたのでぶらつくことに。しかも無料。ありがたい。これがなかなかしっかりした展示内容で、かなり楽しむことが出来た。3階にある鳥類の剥製が美しく、近代に描かれた観察図とその剥製とを照らし合わせながら見る展示が良かった。「サンショウクイ」という鳥がいる。漢字で書くと「山椒喰」で、その由来はこの鳥の鳴き声にある。なんでも「ヒリリ」と聞こえるその鳴き声と、「ピリリ」と辛い山椒とを掛けた名前なのだそうだ。こんなに洒落た由来の名前があるだろうか。博物館にはこういう学びがあふれている。鳥類の名前やその生態を積極的に学ぶ機会はほとんどない。未知の領域に関する知識は面白い。他にも様々な美しい鳥類の姿や生態を知ることが出来た。極楽鳥と呼ばれる「オオフウチョウ」や、鶏の原種と言われている「セキショクヤケイ」。鳥類の姿は美しく、面白い。なんというか、姿形ではなく、生命の持つエネルギーそのものの魅力を感じさせる。ひとつの種が持つエネルギーをどのような方向に爆発させるのかという、その違いを視覚的に知ることが出来るような気がする。当たり前だが、人類とは全く違った方向の生物なのだ、鳥類は。もちろん、他の生物類も。他にも医家の歴史に関する特別展示『医家の風貌』も面白かった。このあたりはやはり東京大学運営の強みという感じがあった。展示に使用されているケースやガラス棚も実際に東京大学でずっと使われていたものらしく、館内は全体的にモダンな雰囲気だった。おそらく全体で2時間近く展示を見ていたはずなので、あの時間帯の来場者の中で一番楽しんでいたのは私だったと思う。

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過去の東京大学の講義室を再現した場所

 しかし、さすがに連日の疲れが足と肩に来てしまい、立っているのもしんどくなったので友人との待ち合わせまでずっと座って過ごすことにした。KITTEの地下一階で一時間ベンチに座っていたのが私です。今思えば喫茶店に入るか軽くマッサージでもしてもらえばよかったのだが、もう頭が働いていなかったのだろう。まったく考え付かなかった。だいたい14時前くらいに幼馴染みと合流する。人生の半分以上友達をやっている人と東京で会うのは、未だに変な感じがする。もう動くのもしんどかったので、そのままKITTEのレストラン街にあるお店でお昼ご飯を食べることにした。丸の内の高層ビル群が見える席だったので、おいおいドラマみたいだなと思う。『天気の子』やコミケの話なんかをしながらご飯を食べる。幸せな時間だ。

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さぁ撮ってくださいと言わんばかりのセット

 昼営業の終了時間も迫っていたのでささっとお店を出た後は屋上に出た。雨上がりの空は空気が澄んでいて、太陽の光が鮮明に景色を照らしていた。ビルの日陰になっていたのであまり暑くなく、そこでまたすこし他愛もない話をする。本当に他愛もなかったのか、内容が思い出せない。会話なんて、そのくらいで良いのだ。東京駅まで呼び出しておいて申し訳なかったが、次の予定が迫ってきていたので、15時過ぎには解散する。タピオカを飲む時間がなかったのが残念。次の機会に持ち越しだ。

 

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雨上がりの東京駅周辺

 京浜東北線で再び浜松町に行き、そこから東京モノレールに乗り換える。目的は流通センターで開催される「コスホリック」。このイベントはその名の通りコスプレイヤーが中心になっていて、18歳未満の入場が禁止されているのが特徴だ。入場にはカタログの購入と身分証の提示が求められる。コミックマーケットに比べれば規模は小さいが、方向性の違いからか入場者は多かったように思う。だいたい16時前には到着。カタログをその場で購入する人の列がすごいことになっていた。私は事前に買っていたので、それを横目に見ながらあっさりと入場。買っておいてよかった…。開場時間が15時ということを考えると、一般参加をするつもりならカタログは事前に買っておいた方が良いのだろう。私が今回コミケの4日目(今回のコスプレサークルは4日目だった)ではなくこのコスホリに来た理由は簡単で、一番好きなレイヤーさんである「ありかみう」さんがコミケとコスホリの両方にサークル参加されるからである。コミケの方に行くことも考えたが、初めてのサークル参加の翌日にまたビッグサイトに行く体力はないだろうなと思い、夕方からのコスホリに参加することにしたのだ。しかも夏コミ。朝の有様を考えれば、この判断は大正解だった。一目散に目的のブースに行き、買い物を済ませる。ありかみうさんはこの日も新鮮に可愛かった。お手紙と差し入れを渡すことも出来たので、今回のミッションはほぼ達成できた。そしてなんと、このイベントではツーショットのチェキを撮っていただけたのだ。正直こういう経験は初めてで、しかもお相手は何年も応援してきた方だったので、撮って貰っている間の記憶がほとんどない。高揚感だけがそこにはあった。新幹線の時間が迫っていたので、名残惜しいながらも流通センターを出発。たぶん、ずっとニヤニヤしていたと思う。周りの人、気持ち悪かっただろうなぁ。東京駅には、たしか18時半とか19時前には着いていたような気がする。混みあうグランスタでお土産に「カファレル」のジャンドゥーヤチョコパイを買い、帰りの車内で食べるお弁当を探す。悩んだ結果、「伊達の牛タン」で牛タン弁当を購入。グランスタで働いている人はみな一様に顔が死んでいたが、それで良いと思う。こんなくそ忙しい時期に働いてもらっているだけで感謝しなければならない。ホームの売店でお茶とポカリを買って、新幹線を待つ。その間にポカリを飲み切ってしまった。かなり乾いていたのだろう。定刻通りに出発した車体に揺られながら、この3日間を振り返る。東京という街の魅力はなんだろう。そこらじゅうにあふれているカルチャーか、純粋な人間の多さか、あるいは近代的な街そのものか。どれも正解で、どれも違うような気がする。すべてがあるように感じる東京にはきっと、その実なにもない。そしてそれ以上に、地方には不要なものが多すぎるのだ。だからこそ、若者は東京を目指す。自分たちの生活につきまとう不要なものを捨てて、ゼロから始めるために。必要なものがない、なのに不要なものがある。それが地方なのだろう。私もいつかこの街で生活を営むのかもしれない。だがそれはきっと、すぐにではない。漠然とした、そんな感覚がある。東京が私を呼ぶ日が来るのだろうか。

 そんなことを考えているうちに新幹線はいつの間にか新横浜を出発していたので、私はお弁当の封を開けた。