感情の揺れ方

それでも笑っていたい

ラーメンズ第15回公演『ALICE』

 モーフィング。モーフィングとは、時系列的に連続するふたつの画像、つまり変化前の画像Aと変化後の画像Bがあったとして、その間に存在する変化中の状態をコンピューターグラフィックスで自動的に生成してしまう技術のことを指す。例えば真顔の画像と笑顔の画像があったとして、そこにモーフィングを用いれば真顔から笑顔へと表情が変化する様子を作り出すことが出来る。この技術は映画『ターミネーター2』やマイケル・ジャクソンの「Black or White」のPVで使用され一躍有名となった。

 ある物事が変化していく様子を作り出すこと。それをモーフィングと呼ぶとするなら、ラーメンズ第15回公演『ALICE』における一本目のコントが「モーフィング」と銘打たれていることにも納得がいく。このコントでは「釈然としない話」が続いた後、小林と片桐が様々な言葉を徐々に変容させていき、いくつかのショートコントが連続していく。例えば「厚生年金会館前」というワードが「好青年機械化前」に変化して、小林賢太郎が機械化された好青年を演じたりする。続く二本目「後藤を待ちながら」では、アルバイト(後藤)の誕生日を祝うためにサプライズを計画する”良い”上司が徐々に悪態をついていく様子が描かれる。三本目の「風と桶に関する幾つかの考察」はモーフィングの最たるものと言っていいかもしれない。「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざの、「風が吹く」という事象と「桶屋が儲かる」という事象の間に何が起こっているのか。その部分をコンピュータグラフィックスではなく、ラーメンズのふたりが生成していく。

   

 しかしこの「風と桶に関する幾つかの考察」には、もうひとつ注目すべき点がある。それはオチの部分で「桶屋が儲かる」というワードにある変化が加えられている点だ。原則に立ち返れば、モーフィングの始まりと終わりとは固定されているはずで、そこに変化は発生しないはずだった。モーフィングはあくまでも始まりと終わりの間にあるはずの変化、間隙を埋めていく作業だからである。だが、その終わりの部分すらこのコントでは変化してしまった。変容。あるいは変身。そう、『ALICE』という公演における「変化・変身」は、モーフィングの枠を飛び越えていく。「バニー部」、「甲殻類のワルツ」、「イモムシ」。特に「イモムシ」は「モーフィング」という単語の生まれ方に関するふたつの説、すなわち「”変化・変身”を意味する metamorphosis の中間部分から命名された」という説と「move(移動)とmorphology(形態)の合成である」という説に鑑みると、この公演において重要な役割を担っているような印象を受ける。

 そして最後のコントである「不思議の国のニポン」もまた、変化・変身というテーマを念頭に置いて作られている。それも先述した「バニー」「甲殻類」「イモムシ」といったコントにおける「形態・動き」にフォーカスしたものではない、「言葉の変化」を扱っているのが「不思議の国のニポン」だ。不思議の国のニポン。不思議の国。不思議の国の…アリス。不思議の国の、という枕詞によって導かれるのは、やはりルイス・キャロルによる『不思議の国のアリス』だろう。ストーリーはもちろん、この作品は作者によるナンセンスな言葉遊びや「かばん語」と呼ばれる、複数の語の一部を組み合わせて作られた合成語によっても有名である。例えばアリスが"tail"と"tale"を聞き間違えた場面であったり、「ジャバウォックの詩」に登場する「Frumious(fuming+furious)」、「Uffish(gruffish+roughish+huffish)」といった、それぞれ「燻り狂う」「暴なる」を意味する単語などがそれにあたるのだが、『不思議の国のアリス』がもつこの特徴はまさしく『ALICE』のそれと一致するのではないだろうか。そもそも考えてみると、「バニー」も「甲殻類」も「イモムシ」も『アリス』において言及される生物たちだ。ナンセンスな言葉遊び、合成語、バニーにイモムシ。しかしそれでも釈然としない部分はある。それはやはり「モーフィング」によってラーメンズが生み出す、固定された「始まりと終わり」の間を埋める部分である。「風と桶」におけるそれも、「バニー部」におけるそれも、やはり釈然としない。しかし冒頭のまさに「モーフィング」において、ある重要なキーワードが提示されている。そしてそれはこの『ALICE』全体を貫いている。

「釈然としたいか?」

 

youtu.be

週間日記(2020/11/24~11/29)

 11/23(月):昨日は寝る前に作業を進めた。一週間以上かかって、ようやく『罪の声』のエントリーを書きあげる。野木亜紀子はちゃんと怒っている。一貫して怒っている。その怒りをしっかりと作品に昇華する姿勢は本当にすごい。『MIU404』で菅田将暉演じる久住が発した「俺はお前たちの物語にはならない」というセリフと、『罪の声』で小栗旬が演じた阿久津英士が言った「曽根俊也を、この事件をエンタメとして消費することになりませんか」というセリフには、野木亜紀子という作家の強い問題意識を感じてならない。観る側の罪、作る側の罪。ベッドの中で見た「シタランドTV」は設楽統の自由さが出ていて良かった。

maholo2611.hatenablog.com

 朝起きたら、なんとなく寒いような気がする。寒暖差が激しくて、天気予報の数字を見てもいまいちピンと来ず、何を着ていくべきなのかが分からない。数字ほど寒くないこともあるし、その逆もしかりだ。適当に服を着て外へ出たら雨が降っていて最悪だった。気温の問題ではない。自分はロンドンに領地を持っている貴族だと言い聞かせて、そのまま駅へ向かう。雨は気持ちの問題。電車に乗ってアルバイトへ向かう。そろそろクライマックスというか、終わりが見えかけているのだが、今日はめちゃくちゃだった。本来ならする必要のない業務がえげつない回り方をしてきて、パニックになる。お昼くらいに休憩を取って、東洞院通にある「Kitichen Koto Koto」でご飯を食べた。注文したのはオムライス。トロトロの卵がライスの上に覆いかぶさっているタイプのオムライスも好きだけれど、個人的にはしっかり巻いてあるタイプの方が好み。チキンライスには枝豆が入っていて、食感が面白かった。かかっているデミグラスソースはバッチリ美味しくて、今度はカレーを食べたい。日替わりメニューのグラタンも気になった。お店を出て四条通を歩いていると、やけに人が多い。そういえば今日は勤労感謝の日だった。勤労に感謝するくらいで休みになるなら毎日でも感謝したい。アルバイトは軽く炎上しているような雰囲気で、予定よりも遅い時間にタイムカードを切った。完全に元気がなくなってしまったので、京都駅まで地下鉄に乗る。帰宅するころにはもう太陽が沈んでいた。夜はぼんやりとテレビを見たり、作業をしたり。寝る前に『アナスタシア』のエントリーを書き始めたのだが、いかんせん疲れがあってまったく進まず。こういう日は眠る方がいいのだと自分に言い聞かせて、ベッドに入る。  

f:id:Maholo2611:20201124231548j:plain

オムライス
 11/24(火):なんだか微妙に体の調子が悪い。熱があるとか咳が出るとか、そういうタイプのやつではなくて、精神的な負荷と睡眠不足が相まって全体的に調子が悪い。逆に言うと昨日までは体の調子が良かったことに気づく。健康な体が一番です。八重歯が当たるところに出来た口内炎も絶好調で、何をしていても痛い。すべてがうまくいっている。今日もいつも通りの電車でアルバイトへ向かった。昨日の軽い炎上は何事もなかったかのように鎮火していて、それはそれで納得がいかない。こっちは燃え盛る炎に突っ込む覚悟で現場に来たんですけど、という。服装を間違えてしまって、作業をしている間ずっと寒かった。この冬は屋内でもしっかりと防寒用の服を着なければならないので、面倒くさい。換気と防寒は両立するのだろうか。特に休憩を取らず、お昼過ぎにタイムカードを切る。いつもよりは早い時間だったので、どこかに寄って買い物でもするかはたまた喫茶店にでも行こうかなと思ったものの、なんだかテンションが上がらずそのまま京都駅まで歩いた。東本願寺には猫が3匹いて、みんな冬毛に生え変わっていた。野良猫の換毛期ってどうなっているのだろう。帰宅して、夕方から作業を進める。夜は「マツコの知らない世界」を見たり。寝る前に「ハライチのターン」を聞きながらぼちぼちとエントリーを書いていたのだが、眠気が酷く、ある程度進めたところでベッドへ入ることにした。
 
 11/25(水):今日はアルバイトがない。昨日の時点でほとんどの業務に片がついたとの連絡があったので、それなら無理をする必要はない。昨日から続いている体の不調には回復の兆しが見えておらず、朝もまったく起きられなかった。シンプルに睡眠不足なのかもしれないとは思うのだが、眠気を感じて目を閉じるとものすごく眩暈がして内臓がひっくり返るような感覚になるので、それだけではないような気がする。肩の力を抜いて日々の暮らしを送っていきたい。そんな日が来るのかは別にして。祈りは大切。いつもよりはゆっくりした時間に起きて、ワイドショーを見ながら朝ご飯を食べる。一応体温を計ってみたけれど、普通に平熱だった。その後は車に乗って外出。洗車場に向かった。金曜日に車をディーラーへ預ける予定なので、それまでに一度洗車をしておきたかった。外に出ると明らかに曇り空で、心配になる。いつもの道でガソリンスタンドへ行こうとしたら工事で通行止めになっていて、迂回することになった。こういう日は絶妙に悪いことが続く。洗車は機械式で手短に済ませた。拭き上げ場に移動して、エアーブローで車に残った水滴を吹き飛ばしていく。油断をしていると顔面に水滴が飛んでくるので、注意しなければならない。眼鏡がびしょびしょになるとものすごくテンションが下がる。最後は車内に掃除機をかけて、どこかへ寄るわけでもなく帰宅。いい時間になっていたので、軽めに昼食をとる。「ヒルナンデス」ではオードリーが3時間限定の観光大使を務める企画の第2弾が放送されたいた。トゥース。酢飯を使ったオムライスの商品名変更を本気で考えている洋食店の店主が良かった。午後は作業を進めようと思っていたのだが、やっぱり体調が思わしくなく、ほとんどを寝て過ごす。今日は完全にダメな日。夜は「ベストアーティスト」を見たり、「刑事コロンボ」を見たり。「ベストアーティスト」は「こんな時代ですが」というセリフが多すぎてすこしうんざりしてしまった。言いたいことは分かるけれど。「コロンボ」はメキシコを舞台にした回だった。犯人役がコロンボに「君は慇懃無礼でネチネチと…」と言っていて、笑ってしまう。コロンボとはそういう人なのです。なんというか、一度すべてを諦めて、今日は寝てしまおうと思う。
   
 11/26(木):昨日はベッドに入ってから一瞬で眠ってしまって、もうほとんど失神に近かった。夢を見た記憶もない。トイレに行きたくて目が覚めた。軽く二度寝をして、いつもよりゆっくりした時間に起きる。今日もアルバイトはない。次に行くのはいつになるのか分からない。そういう、フレキシブルなアルバイト先。ぼんやりしながら朝ご飯を食べて、すこしゆっくりしてから車に乗って外出する。11時に予約していた美容院へ向かっていたら、いつも使っている道ががっつり道路工事中で普通に遅刻してしまった。遅刻だけはしたくない。ルールその1、遅刻はしない。セブンルールどころか、当たり前すぎてどうやっても転がせない。先月に当て直したパーマがとれてしまって、伸びた部分を短くしたらもうほとんど直毛になってしまったので当て直した。強めのやつを。1時間半くらいかかって帰宅。途中で近所のハンバーグ専門店によって、お弁当をテイクアウトした。すこし前にオープンした新しいお店で、内装も綺麗でおかずにも気が利いているし、なによりハンバーグが美味しい。オリジナルソースが特に美味しい。入った時点で席はいっぱいで、お弁当を待っている間に待ち列が出来ていた。自分の好きなお店が流行っているのは嬉しい。お昼過ぎに帰宅して、さっそくお弁当を食べる。美味しいハンバーグはテイクアウトでも美味しい。すこし休憩してから、また車に乗って外出。帰省している姉を乗せて、市役所や薬局を回る。公的な手続きの大変さが隣に立っているだけでもひしひしと伝わってきて、自分がやる側になったときのことを想像してしまった。すっかり暗くなった時間に帰宅。夜はなんとなく「ダウンタウンDX」を見た。女芸人スペシャルと銘打たれた回で、ぼる塾やはなしょー、紅しょうがなどが出演していた。あんり、大活躍という印象。「あさパラ」でときどき見かけた紅しょうがもしっかり活躍していて、なんだか嬉しかった。謎の感情。
 
  11/27(金):寒い。今日はなんだかとても疲れてしまった。タイヤ交換と点検のために朝からディーラーへ行く予定になっていたのだが、シンプルに寝坊をしてしまった。朝食も食べずに急いで用意をして車に飛び乗ったらなんとか間に合ったので結局大ゴチにはならなかったのだが、問題はその後で、車を買い替える気もないのに延々と新車を勧められてものすごく疲弊した。学生時代に乗り始めたものだからそもそも私が買ったものではないし、保険の関係で名義上自分の所有にはなっているけれど精神的所有権は完全に親にあるのだから、私の意見でどうこう出来るようなものではない。その旨を誠心誠意伝えたのだけど、営業の人はメンタルが強い。全然聞かない。馬の耳に念仏。通された席の位置関係で、愛車が作業場から出されて私のことを待っているのも見えている。帰らせて欲しい。お願いだから帰らせて欲しい。こんな時期なのに、そんなに対面で話し続けないで欲しい。試乗までさせられたし。排気量が200cc増えたんですよと言われても、街乗りしかしないんだから関係ないよ。他のユーザー様からはその点に不満が出ていて…知らない。どんな運転してんだそいつ。レーサーかよ。安全運転に努めてくれよ。最後の一時間はもう「へー」しか言っていなかったのに、営業のメンタルは強い。命からがら逃げ出して、帰る頃にはヒルナンデスが終わりそうだった。もうディーラーには行きたくない。雪が溶けたらまたタイヤ交換に行かなければならないけど、もう行くのが怖い。どうしてくれるんだこの心を。午後はそんな心を引きずったまま作業をして、ついに『アナスタシア』のレビューを書き終えた。なぜか3日くらいかかってしまった。それからはもう疲れてしまって、夜まで寝てしまった。もうディーラーには行かない。
 
 11/28(土):昨日は寝る前にもしっかり作業を進めた。『エル・アルコン』のレビュー記事を書く。ティリアン・パーシモンという人間の生き方やその最期について考えていると、なんだか悲しくなってしまう。え~るあるこ~ん、え~るあるこ~ん。あの曲はズルい。今作での礼真琴さんは完全に安蘭けいさんのフォロワーになっていたと思うのですが、どうでしょうか。朝起きて、ぼんやりしながら朝ご飯を食べる。今日の「あさパラ」には番組後半から特別ゲストが出演するということで、冒頭でMCのリンゴさんが「後半からゲストが来ますが宮崎謙介ではありません」と告知していた。切れ味が怖い。問題のゲストは万博担当大臣だった。そんな役職名だったかな。覚えていません。「あさパラ」の放送が終わったあともなんとなく10chを流していたら、「光石研×松重豊×鈴木浩介 俺たちのノープラン×ドライブ2」という番組の放送が始まった。どうやら第二弾らしく、第一弾が放送されていたのも知らなかったのだが、いやすごいメンツの旅番組だなと思ってそのまま見ていたら面白かった。今回はゲストがいますよということで各々がやれ吉田羊だやれ吉瀬美智子だと予想し合っている中、空港に着いたら待っているのは野間口徹という流れが好きだった。バイプレーヤーにもほどがある。空港で待たされすぎて、他のメンバーが梅が枝餅を食べている隣でうどんを食べている野間口徹もまた良かった。「よかろうもん」とネイティブな福岡弁を話す松重豊のカッコよさったらない。結局最後まで見た後外出して、近所のお店でカレーをテイクアウトしてすぐに帰宅。最近なんだかインドカレーが食べたくて仕方がなかった。いつだかの「かりそめ天国」の影響かもしれない。ナンでインドカレーを食べながら、家のテレビで『エル・アルコン』千秋楽のライブ配信を見る。すごい光景だ。鑑賞の裾野が広がっているのは嬉しい。何かを食べながら宝塚を観るという新鮮さ。舞空瞳さんの歌が初日よりうまくなっていて驚く。あんなに踊りっぱなしのショーをこなしているのに歌の実力がのびていくという意味の分からなさ。ナンでお腹がパンパンになってしまったので、夕方にすこし仮眠を取る。陽が沈む時間がすっかり早くなっている。季節の進み方。夜はぼんやりと過ごす。普段食べないインドカレーに体がびっくりしているのかお腹が痛いので、早めに寝ようと思う。

maholo2611.hatenablog.com


f:id:Maholo2611:20201128222358j:plain

チキンカレー、ほうれん草チキンカレー、シーフードカレー。
  11/29(日):昨夜の腹痛は、朝起きたらどこかへ消えていた。寝るとだいたいの不調は治る。治らないものもある。無意味な文章。最近は肉体的にも精神的にも疲れていて、今朝もアラームをセットしていた時間に起きることが出来なかった。起きられるかなぁじゃないねん、強い気持ちで起きるねんの精神が足りない。そういえばさや香はM1の準々決勝で落選してしまったらしい。「せやねん」の若手体張り枠として、応援している。目指せかまいたち、目指せ千鳥。ブランチみたいな時間にぼんやりとしながら朝ご飯を食べる。インスタントではないコーヒーを飲んでも頭がスッキリしない。もういいやと思って、こたつで30分くらい二度寝した。風邪をひくよと怒られてしまいそうだけど、もう流石にそんな年でもない。お昼前くらいになんだか無性に甘いものが飲みたくなってしまって、勢いのまま車に乗り込んだ。飲みたさとめんどくささで、飲みたさが圧勝だった。近所のスターバックスには列が出来ていたけれど、ここまで来たからには引き返す選択肢などない。期間限定のフラペチーノを買って、飲みながら帰った。午後もぼんやり作業をしながら過ごす。夜は千鳥の特番を見た。地上波は見たい番組に限って時間帯が被っている。今週にいたっては「イッテQ」も「せっかくグルメ」も放送していたので、3つもかぶっている。どうしたもんかいのぉ状態。今週はなんだかずっと調子が悪くて、今日もお風呂で髭を剃っていたら手元が狂って太ももをスパッといってしまった。血がダラダラと出てくる。助けてくれ~と思いながら作業をして寝たい。
 
 
 

感想:星組公演『エル・アルコン─鷹─/Ray─星の光線─』

 礼真琴がティリアン・パーシモンを演じるのは必然だったのかもしれない。2007年、安蘭けい遠野あすかというトップコンビを中心にした星組で上演された『エル・アルコン─鷹─』は、主人公ティリアン・パーシモンがが今までの宝塚らしくない、いわゆる「ダーティヒーロー」だったことで話題を読んだ。13年の時を経て、ティリアンが宝塚の舞台に帰ってくる。礼真琴という男役によって。

 ティリアン・パーシモンが「ダーティヒーロー」と形容されるのは、彼の生きざまに理由がある。イギリス人でありながらスペイン貴族の血を引く彼は、小さな頃から迫害を受けてきた。「野心のままに生きてごらん、君にはそれが出来る」という言葉を胸に、ティリアンは野望のままに生きていく。幼い彼の心に広がった、まだ見たこともない七つの海を目指して。

漆黒の翼を翻し 鷹は海を目指し

海に生き 海へと還る

惜しくない 安らぎも温もりも

あの日の微かな残り香は 母の手のオレンジの香り

いらない いらない

遠い彼方に 全てを置いてきた

戻ることない あの日に別れ告げ

私は未だ見ぬ大空に羽ばたいた

染め上がる大海原を 照らし出す太陽の色は

あの日私の手を染め上げた罪の色

その真紅に彩られた私の夢

その名を野望と呼ぼう

   ─「エル・アルコン─鷹─」

 彼の野望。それは、いつ日かスペインに帰り、あの無敵艦隊を率いて七つの海を制覇することだった。自らの野望を達成するためなら、彼はどんな手段も選ばない。若くしてイギリス海軍の中佐となった彼の最初の標的は、港町プリマスの大商人グレゴリー・ベネディクトだった。スペインからの独立を目指すネーデルランドを支援する彼は、ティリアンにとって邪魔な存在だった。グレゴリーに近づき信頼を得る一方で、ティリアンは友人の陸軍大佐であるエドウィンと、その婚約者で海軍海軍提督の娘ペネロープと出会う。策略を巡らし、二人の間に亀裂を生じさせた彼は、エドウィンに代わってプリマスからロンドンへ帰るペネロープの護送を務めることになった。しかしその途中、ティリアンの船は海賊船の襲撃を受ける。フランス貴族の称号を持つ誇り高き女海賊、ギルダ・ラバンヌ(舞空瞳)率いるブランシュ・フルールの一団だった。自らの領地であるウェサン島を脅かすティリアンの船に対して巧妙な攻撃を仕掛け追い詰めるギルダだったが、ティリアンの猛反撃に合いあと一歩のところで退却を強いられてしまう。ティリアンとギルダは、敵ながら互いの見事な腕前に惹かれていくのだった。海賊の攻撃を切り抜け無事ペネロープをロンドンまで送り届けたティリアンは、海軍大佐へと異例の出世を遂げた。やがてティリアンは国家への反逆罪に問われたグレゴリーの裁判に立ち会うことになる。無実の訴えもむなしくグレゴリーには死刑の判決が下されたが、すべてはティリアンの思惑通りだった。ティリアンの前に現れたグレゴリーの息子レッド(愛月ひかる)は、いつか必ず父親の名誉を回復し、ティリアンの悪事を暴くと宣戦布告する。再びブランシュ・フルールと戦うことになったティリアンは、ギルダと激しい攻防を繰り広げた末、ついに彼女を捕らえる。自分と同じく海でしか生きられず、勇敢で誇り高いギルダを愛し始めていたティリアン。ギルダもまた、憎むべき敵であるスペインの血を引く彼に心惹かれていた。

 ティリアン・パーシモンが、野望のためには悪事を悪事とも思わないのはなぜなのだろう。それはおそらく、彼がスペインに亡命し無敵艦隊を率いて七つの海を制覇することが、彼にとって自らの出自に対する復讐だからではないだろうか。ティリアン・パーシモンのアイデンティティは崩壊している。「スペイン野郎が」と罵られ迫害された幼少期はもちろん、自らの体に流れるスペインの血、自分を通してジェラード・ペルー(綺城ひかり)と故郷のスペインを見る母のイザベラ(万里柚美)…。そのすべてが、ティリアンにとって煩わしく、しかし忘れがたいものだったはずだ。イギリスとスペインを支配し、果ては世界に広がる七つの海をも制覇する…。そうして初めてティリアン・パーシモンは自分をひとりの人間として認めることが出来たのかもしれない。だからこそ、ティリアンは海に憧れるきっかけとなったジェラード・ペルーをウェサン島で捕らえその首に縄をかけたときも、「おっしゃりたいことはそれだけですか」とだけ言い放ったのだろう。何もいらない。過去の思い出も、彼には不要なのだ。そんな彼の復讐は、イギリスを滅ぼし七つの海を制覇するのではなく自らが燃え尽きるという形で達成される。この結末を見ると、ティリアン・パーシモンという一人の人間を思って涙をこぼしそうになるのだが、それはやはり礼真琴という男役が持つ表現力の賜物だろう。彼の力がなければ、ティリアン・パーシモンが「ダーティヒーロー」になることはなかった。決して許されない悪行の数々を働きながらもカッコよく、それも哀愁を漂わせるティリアンというキャラクターを演じきった礼真琴は一体どれだけの実力を秘めているのだろう。しかし思い返してみると、彼がダーティな役どころを演じる可能性はあった。『桜華に舞え』の八木永輝役を見て、「この人に悪役を、それも二番手ではなくトップスターとして演じて欲しい」と感じたのだ。そしてその願いは、期せずして叶えられることとなる。『アルジェの男』によって。当時彼は二番手ではあったが、素晴らしいパフォーマンスを見せた。彼が演じたジュリアン・クレールは、ティリアンと同じく野望に生きる男だった。八木永輝、ジュリアンというキャラクターを経て、礼真琴の引き出しは大きく広がったように思う。そんな彼がトップスターとして、満を持してティリアン・パーシモンを演じたのは必然だったのではないだろうか。

   

 『Ray─星の光線─』は、本公演でも上演された礼真琴・舞空瞳の大劇場お披露目公演である『眩耀の谷』と同時に上演されたショーを今回の梅田芸術劇場公演のために構成し直したものになっている。大劇場で観劇したときにもそう感じたが、やっぱり礼真琴と舞空瞳はショー・スターだと言わざるを得ない。芝居で見せる両者の魅力はもちろんだが、ことショーで二人が組んだときに見せるパフォーマンスは筆舌に尽くしがたい。それぞれがソロの場面で見せる実力も相まって、「ショーの星組」は今新たな一面を見せている。ここからは大劇場公演のバージョンとは演出が変更された箇所を中心に、描く場面の感想を書いていきたい。

 まずプロローグの第1場から第3場では、瀬央ゆりあが担当していた部分を綺城ひかりが、華形ひかるが担当していた部分を大輝真琴が担当していた。

 続く第4場は、本公演では礼・舞空のデュエットになっていたが、梅芸版では礼のソロシーンになっている。ポップなナンバーを軽やかに歌い上げる礼が印象的。

 次の第5場は瀬央ゆりあがソロを歌う場面だったため、大きく変更されている。天飛華音や桜庭舞、水乃ゆりといった若手の組子数人が歌い継ぎ、これからの星組を感じさせた。

 第6場と第7場は天寿光希のソロをバックに男役と娘役がタンゴを舞う場面だったが、そのコーラスをひろ香祐が担当していた。人数が減っても礼・舞空を中心にした群舞の迫力は衰えておらず、見ごたえがある。

 第8場はニューヨークを舞台に、有沙瞳と愛月ひかるがスーツ姿の男役を引き連れ、ジャズに乗って踊る場面で、大きな変更はなかった。本公演で美稀千種が務めていたソロは数人の男役が担当している。

 続く第9場から第14場まで続く中詰めの場面では、華形ひかるが男役を連れていた部分を、娘役を率いた舞空が担当していたところ以外に大きな変更はなし。ここまでで比較しても舞空の場面が多くなっているが、彼女のパフォーマンスはその負担を感じさせないものだった。

 本公演では綺城・有沙のデュエットだった第15場Aパートはそのまま。Bパートではロケットが披露されるが、梅芸版でロケットガールを務めたのは桜庭舞・都優奈・瑠璃花夏の三人。

 最も大きな変更があったのは、第16場と第17場。本公演では「オリンピア」をテーマにした場面だったが、今作では古代ギリシャを舞台に人間が持つ様々な「愛」を歌う場面に変わっている。もちろん万里柚美さんのセリフも違うものになっていた。

 第18場から第22場はフィナーレとパレード。本公演では極美慎が歌っていたソロの部分を天飛が担当していた。フィナーレで大きな変更があったのは、礼・舞空のデュエットダンスの場面。バックに流れる曲が「星に願いを」になっている。このアレンジのカゲソロを遥斗勇帆と音咲いつきが務めているのだが、ぜひ聴いて欲しいと思う。

 華やかで溌剌としたショーという印象はそのままに、若手を起用した場面が多くなり、新たなフレッシュさを感じられる構成、演出になっていた。礼・舞空のパフォーマンスはもちろんだが、やはりフィナーレのデュエットダンスで流れていた「星に願いを」のカゲソロがかなり印象に残っている。遥斗勇帆は星組、あるいは劇団全体でも指折りの歌唱力を持っていると個人的に思っているので、これからの活躍を願っている。まずは次回公演『ロミオとジュリエット』で演じるヴェローナ大公役に期待だ。

 

 

感想:宙組公演『アナスタシア』~真風涼帆・星風まどかの遥かな旅路~

 ミュージカル『アナスタシア』。おそらくだが、2020年日本のミュージカルシーンはこの作品が席巻するはずだった。はずだったのだ。新たな感染症が世界中で流行し、人々が分断され、ありとあらゆる舞台の幕が閉じたままになるという事態に直面することがなければ。今までの愛すべき日常が続いていれば『アナスタシア』はまず梅田芸術劇場主催のもと3月に東京で幕を開け、4月に大阪で千秋楽を迎えていた。そしてそれに続く形で、宝塚版が上演されることになっていた。しかし、新型感染症の感染拡大に伴い梅田芸術劇場版は予定されていたスケジュールの半分もこなすことなくクローズされ、この宝塚版もおよそ5か月に渡って上演が延期された。自粛の空気に満ちた数か月を経て、世界の在り方は大きく変化している。当たり前だと思われていた日常を過ごすことは不可能になった。だが、そのような状況だからこそこの『アナスタシア』という作品のテーマである「家族とはなにか?」「帰るべき場所とはなにか?」という問いかけに、以前とは違った説得力のようなものを感じさえする。帝政ロシア最後の皇帝ニコライ二世とその一族は革命によって処刑されたが、末娘の皇女アナスタシアだけは生き延びていたのではないか──。いわゆる「アナスタシア伝説」をモチーフにしたこのミュージカルは、記憶喪失の少女が果たして誰なのかという大きなテーマを軸に、人間の背負う「過去」や「記憶」をめぐる遥かな旅を描く物語だ。

 20世紀初頭のロシア、サンクトペテルブルク

 ある冬の夜、ロシア帝国皇帝ニコライ二世の末娘アナスタシアは、大好きな祖母であるマリア皇太后から小さなオルゴールを手渡される。”このオルゴールから流れる音を聞いたら私を思い出して…”。皇太后はそう言い残し、パリに移住する。

 時は流れ、17歳の美しいプリンセスへと成長したアナスタシア。しかし、王宮での舞踏会の最中、ボリシェヴィキの攻撃を受け一家は死亡、ロマノフの栄華は終焉を迎えるのだった……。

 ロシア革命から10年の時が過ぎたが、サンクトペテルブルクは未だ混乱の中にあった。皇帝一家の中でアナスタシアだけが生き残ったのではないか…街にはそんな噂が広がっている。そんな混沌とした世の中を、悪事に手を染めながらも生き延びてきた鷺氏のディミトリは、アナスタシアを探し出したものには皇太后から莫大な支払われるという話を耳にし、相棒のヴラド・ポポフと共に大掛かりな計画を企てる。アナスタシアに似た人物を探し出し、報奨金を騙し取ろうというのだ。ディミトリ達は、早速”アナスタシア役”のオーディションを始めるが、めぼしい者はなかなか現れない。そんな時、出国許可証を手に入れたいと一人の娘がディミトリを訪ねてやってくる。彼女には幼い頃の記憶がなく、”アーニャ”という名前すらも、病院でつけてもらったものだという。”パリで誰かが私を待っている……”そう語る娘に興味を抱いたディミトリは、彼女をアナスタシアに仕立てようと決めるのだった。歴史や行儀作法、ダンスなど、アーニャは様々なレッスンを重ねていくが不安を隠せない。

 ディミトリは、そんな彼女に闇市で買ったロマノフのものだというオルゴールを手渡す。すると誰にも開けられなかったオルゴールの蓋をアーニャが簡単に開き…どこか懐かしいオルゴールの音色に、アーニャは遠い記憶の世界へと誘われていく…。

 それまでもディミトリは資金調達に奔走していたがパリ出発の目途は立たないままであった。するとアーニャが、一粒のダイヤモンドをディミトリに差し出す。それはアーニャが病院にいた時、看護婦から下着に縫い付けてあったと渡された、大切なものであった。アーニャはディミトリを心から信じようと決めたのだ。様々な困難を乗り越え、ディミトリ、アーニャ、ヴラドは、皇太后がいるパリへと向かう──。

 一方、ロシア新政府はアナスタシア生存の噂について調査を進めていた。ロマノフ一家を銃殺した男の息子である新政府の役人グレブ、ヴァガノフは、尊敬する父親と同様に命令に従い生きてきた。かつて街中で出会い心奪われたアーニャに対する思いと絶対である任務の間で揺れ動くグレブだったが、”アーニャがアナスタシアであれば銃殺せよ”との命を受け、パリへと向かうのだった。

 華やかなパリの街。ディミトリは、アーニャの事を知れば知るほど、彼女をただの”アナスタシア役”だとは思えなくなっていた。あるバレエ公演の終演後、皇太后の側近でヴラドの元恋人リリーの協力を得て、ついにアーニャは皇太后との面会を許されることとなるが…。

            公演プログラムより  

   

 サンクトペテルブルク発パリ行き──。一人は莫大な報奨金を得るために、一人は自分が何者なのかを知るために。それぞれの旅路は思わぬ形で交わり、それぞれの記憶と過去を巡る遥かな旅が始まる。真風涼帆演じるディミトリは早くに両親を亡くし、悪事に手を染めながら生きてきた。しかし彼の心の中には純粋な部分も残っていて、だからこそどこの誰かも分からないアーニャが自分の隠れ家にやって来たときも水とチーズを出し、彼女を”アナスタシア”に仕立てあげる中で「彼女がアナスタシアであって欲しい」と思い始めるようになる。軽薄な態度に秘められた過去というコントラストの激しい役柄だが、そこは流石の真風涼帆といったところ。ディミトリという人物にとって、帰る場所とはどこなのか、家族とは何なのかという大きなテーマを、演技を通して表現していたように思う。

f:id:Maholo2611:20201125012004j:plain

ディミトリ(真風涼帆)

 そしてやはり、この物語は星風まどか演じるアナスタシアの物語だと思う。アナスタシアかもしれないアーニャが、”ただそうしなければならないと思うから”という理由だけでディミトリとヴラドを巻き込み、サンクトペテルブルクから汽車に乗り込み、本当に皇太后マリアへ会いに行く。「トップスターが主演」という宝塚歌劇の大前提を前にすると忘れてしまいそうになるが、そもそもアーニャはタイトルロールなのだ。「誰だって、別の誰かになれたらって思う」というアーニャの言葉は、この物語を象徴する特別なセリフだと思う。アーニャの目的は、ディミトリやヴラドとは違う。彼女がアナスタシアになろうとするのは、「一体自分は誰なのか」を明らかにするためだ。誰かになるために自分を知るのではなく、自分のことを知るために誰かになる。宝塚版『アナスタシア』において、果たしてアーニャが何者なのかという問いに対して明確な答えが提示されることはない。それはこれが「消えた皇女アナスタシアの物語」ではなく、ましてや「報奨金を狙う詐欺師の物語」でもなく、「サンクトペテルブルクの掃除婦アーニャの物語」であり、「アーニャの帰るべき場所はどこなのか?」をテーマにした物語だからだ。そんな物語の根幹を担う役どころを演じた星風まどかだったが、彼女のパフォーマンスは素晴らしかった。華やかな魅力はもちろん歌唱にも安定感があったし、精神的に不安定なアーニャを演じる表現力には貫禄すら感じさせる。

f:id:Maholo2611:20201127002216j:plain

アーニャ(星風まどか)

 ディミトリとアーニャ、ヴラドといった、ある意味で「アナスタシア伝説」に夢を見る者たちとは対照的に、新たなロシアを守るため、何よりも父の使命を果たすため伝説という「噂話」に決着をつけようとするのが芹香斗亜演じるボリシェヴィキのグレブ・ヴァガノフである。ロマノフの警護隊の一員であったにもかかわらずニコライ二世たちを処刑し、自殺してしまった父親を持つグレブ。彼はそんな父親を肯定するために、まだまだ不安定な革命を成功に導かなけらばならないという信念を持っている。しかし一方で、街角で見かけて一目惚れしたまさにその少女が”アナスタシアが生きている”という噂の張本人として現れる。信念と恋との間で揺れ動くグレブ。おそらく、この物語の中で最後まで葛藤し続けるキャラクターがグレブ・ヴァガノフだろう。そんな難しい役どころを的確に、端正に演じきった芹香斗亜に称賛を送りたいと思う。

f:id:Maholo2611:20201127003615j:plain

グレブ・ヴァガノフ(芹香斗亜)

 スターぞろいと言われる95期生の中にあって 、宙組で中心的な役割を担いつつあるのが桜木みなとだ。「ロマノフ王朝亡き後のソビエト」を舞台にした物語にあって、コメディライクなヴラド・ポポフというキャラクターを好演していた。これからの活躍にも期待がかかる。ヴラドの元恋人でマリア皇太后の侍女を務めるリリーを演じた和希そらとのコンビも良かった。和希は『WEST SIDE STORY』や『アクアヴィーテ』以来の女性役だったが、持ち前の表現力で芝居はもちろんフィナーレでのダンスも素晴らしく、紛れもない実力を感じさせるので、来年に控えるバウホール主演が楽しみだ。

 ここからは気になった出演者を個別に挙げていきたい。まずはサンクトペテルブルクから列車に乗り込む場面で重要な役割を担うイポリトフ伯爵を演じた凛城きら。駅の場面は第一幕のクライマックスと言っていいだろう。第二場でのバレエ「白鳥の湖」をディミトリたちが観劇する場面でダンサーを演じていた組子たちも印象的だった。ロットバルト役の優希しおん、ジークフリート役の亜音有星はもちろんだが、オデットを舞った潤花は鮮烈だった。雪組から宙組へ組替えをしてから今作が初めての本公演だが、この場面で今までとは違う魅力を打ち出してきたように思える。娘役で言うと、今年の9月から娘役に転向した愛海ひかるも記憶に残っている。冒頭でニコライ二世とその家族たちが登場する場面があり、彼女は長女のオリガを演じていたのだが、何とも言えない存在感があった。華のある、と表現する方が適切かもしれない。考えてみると、朝夏まなと主演の『王妃の館』新人公演でクレヨン役を演じていた彼女を見た時に「男役なのか」と驚いた記憶がある。娘役としての活躍に期待だ。

 

映画『罪の声』監督:土井裕泰 脚本:野木亜紀子

 野木亜紀子の、怒り。痛烈なまでの怒り。この世界には唾棄すべき邪悪があり、その被害に苦しむ人たちがいる。それは決して「臭い物に蓋をする」などという行いで見過ごすことの許されるものではない。「声をあげる」こと。「あの人は自分だったかもしれない」と考えること。野木亜紀子の怒りは物語を観賞する私たちだけにではなく、物語を「創る」人間たちにも向けられていて、だからこそ観る者の心をえぐる。 

 この物語は、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)が父親の残した古い箱の蓋を開け、一本のカセットテープを見つけるところから始まる。そのテープに録音されていたのは、35年前に日本中を震撼させた「ギンガ・萬堂事件」で使われた脅迫メッセージだった。俊也はなぜ父親がこんなものを持っているのかと疑問に思ったが、すぐあることに気付く。その脅迫メッセージを読んでいるのが、他の誰でもない自分自身であるということに。自分や父親が事件にかかわっていたのかと俊也が思い悩む一方で、大日新聞の記者である阿久津英士はすでに時効を迎えている「ギンガ・萬堂事件」を扱う特別企画班の一員として、取材を重ねていた。それぞれが事件を追いかけていくうちに、俊也の他にもふたりの子供が脅迫メッセージに「声」を使われていたことが明らかになる。やがて出会った俊也と阿久津は、そのふたりの子供が今どこでどうしているのかを突き止めることを決意するのだが──。

   

 物語全体を通して登場するモチーフに、「橋」や「川」がある。俊也の営むテーラーはまさしく川沿いに位置しており、事件に巻き込まれた自分以外の子供たちを調べていく中で俊也と阿久津はいくつもの橋を渡っていく。高速道路、明石海峡大橋相生橋、戎橋、果てはイングランド北部の都市ヨークまで。物語序盤で俊也が懐石料理を食べていたのは、窓の風景から察するに鴨川沿いの飲食店だろう。取材、調査を進めていく中で阿久津と俊也は様々な土地を訪れていて、一見すると「橋」や「川」はふたりがどれだけ長い「距離」を移動しているのか、換言すれば「横軸の長さ」を印象付けているように思われるが、その実「橋」のモチーフはふたりが「過去」へ旅していることを表している。阿久津と俊也は、「橋」を渡ることで35年前という遥かな「過去」と、さらには政治闘争の時代であった1970年代と向き合っているのだ。真実が、脅迫メッセージに声を使われたふたりの子供である生島望(原菜乃華)と弟の聡一郎(宇野祥平)の半生が明らかとなるにつれて、俊也の胸にひとつの思いが去来する。自分だけが幸せな人生を歩んでいていいのか?と。ついに探し出した生島聡一郎の人生、そして現在は悲惨と表現する他なかった。学校に行くことも、就職することも、家族と過ごすことも彼には不可能だった。ただ本人の意思とは無関係に「声」を使われただけで、人生を粉々に打ち砕かれてしまった人がいる。それなのに自分は父親から家業を受け継ぎ、結婚して子供にも恵まれている。時間によって解決されない問題が、呪いがある。事件から35年という月日が過ぎてもカセットテープにはその「声」が記録されている。その「声」がある限り、宿命を背負わされた子供たちが救われることはない。そしてなにより、人の「記憶」や「感情」は消えることがない。俊也の叔父である曽根達雄(宇崎竜童、川口覚)と母親の曽根真由美(梶芽衣子阿部純子)の中にあった復讐の炎は決して消えることがなかった。だからこそ彼らは「奮い立った」のだ。『罪の声』は、日本中を震撼させた事件に関わった、関わるしかなかった人たちの「声」を通して、決して「大衆」ではない個人個人の「記憶」や「感情」を紐解き、正義とは何か、あるいは罪とは、救いとは何か?といういくつもの問いを観る者に投げかける。

 香港の学生運動SNSを通じて行われる真偽をないがしろにした情報の消費。「日本で初めての劇場型犯罪」とうたわれるあの事件を題材にしたこの作品は、しかし現代に蔓延るいくつもの問題と密接な関係を持っているように思われる。阿久津英士が上司に食って掛かるシーンで放たれる「曽根俊也を、この事件をエンタメとして消費することになりませんか?」というセリフは、ジャーナリズムの在り方を問うているようでいて、情報を発信するすべての人間に向けられているのだ。

 星野源小栗旬を始めとして個々の出演者全員の演技が素晴らしかったが、生島聡一郎を演じた宇野祥平のパフォーマンスと曽根真由美役の梶芽衣子に心からの拍手を送りたいと思う。終盤、すべてを知った俊也に真由美が言った「奮い立ったんやろね」というセリフを忘れることはないだろう。

 

 

週間日記(2020/11/16~11/22)

 11/16(月):なんだか暖かいような気がする。先週までの寒さはどこへ行ったのか。何も考えず、シャツにマウンテンパーカーを着て出かけたら、ちょっと蒸し暑かった。蒸れる。今日もアルバイトへ。週明けの電車はすこし空いているような気がしたけれど、どうだろう。休憩なしで夕方にタイムカードを切る。途中でめちゃくちゃ眠くなってしまって、10分あるトイレ休憩用の時間で仮眠を取った。こんなに眠いことがあるのかよと思いながら目を閉じると、たちまち脳内で夢が再生されて、すこし面白かった。そんなに眠かったんですか、という感じ。一瞬でも目を閉じられれば眠気は結構飛ぶもので、その後はぼちぼち集中することが出来た。それでもまだまだ眠かったので、日が傾きつつある街を京都駅まで散歩する。11月の中旬とは思えないような生ぬるい空気が体にまとわりつくような感じがして、朝晩の気温差もあいまってすこし体調が悪くなりそうだった。マスクの影響が出ているのかもしれない。途中で「ジャンプ」を買い、夕方過ぎに帰宅して、とりあえず一息ついてからポストに入っていた「タカラヅカグラフ」を読む。メディアが連日こぞって報道しているあの数字を見ていると、舞台演劇ひいては動員系のエンタメが再び危機を迎える日も近いなと思ってしまう。冬になればまたこういう状況になることは普通に考えれば分かるはずなのに、果たして中央の人たちはどういう風に計画を立てているのだろうか。日本の冬は、感染症の冬だろう。続けてジャンプを読み、今週の『呪術廻戦』はどうしちゃったんだよと思った後にすこし仮眠を取ってから、作業を進める。夜に録画していた「イッテQ」を見たら、カラスウリという果物が登場していた。カラスウリってなんか聞いたことあるよなぁ、なんかの小説に出てきたよなぁと思いつつ、笑っていたら忘れてしまった。TVerで「あちこちオードリー」と「シタランドTV」を見ながら、寝る前の作業を進める。「シタランドTV」はやっぱり設楽さんの狂気的なところが出ていて最高だ。お願いだから放送時間を30分に伸ばして欲しい。さぁ寝ましょうかとベッドに入り、目を閉じたところで唐突に思い出した。カラスウリカラスウリは、『銀河鉄道の夜』に登場していたのだ。『銀河鉄道の夜』は個人的に思い出深い。初めて読み聞かされたときは「ジョバンニ」が登場人物の名前だということが分からなくて、ずっと「序盤には」だと思いながら聞いていた。やけに振り返ってくれるなぁなんて考えていたのだけど、そんなはずはない。「銀河鉄道の夜のような夜」という、ラーメンズによる素晴らしいコントがあるので、動画を貼っておきます。

youtu.be

 

 11/17(火): 今日もアルバイトへ行く。最近、顎が痛い。口を縦に大きく開くと、左の関節が微妙に痛くなる。一年くらい前に耳鼻科で顎関節症と診断された経験があるのだが、たぶんそれだろう。対策と言えば口を開けないように気をつけながら生活をして痛み止めをしっかり呑むしかないので、特に病院へ行くこともなく過ごしている。気温が下がると、分かりやすく体調が悪くなる。やめて欲しい。午前中はめちゃくちゃ眠かった。開け放した窓際の席に座っていなかったら爆睡していたと思う。今日も生ぬるい気温だったので、外気の爽快感みたいなものは感じられなかったけれど。お昼休憩は、高倉通を下がったところにある「京の禅 車」でご飯を食べた。親子丼と悩んだすえに季節の定食を注文した。主なおかずはキノコと鶏の天ぷらで、それに冷奴とお味噌汁、お漬物。とても美味しかったので、機会を作ってまた行きたい。テーブルには夜用のグランドメニューも置かれたいたのだが、ちらっと開いたページに載っている料理も美味しそうだった。定食の写真も撮ったのだが、いかんせん機種変更したてでまだ操作になれておらず、魚眼レンズを使ったような写真になってしまった。掲載は見送ります。午後はすこし早めにタイムカードを切った。月末が近いので、そろそろシフトを調整しなければならない。22℃を計測したらしい京都の街を歩く。久しぶりに東本願寺の横を通ったら、住み着いている猫が餌付けされているところだった。野良猫に餌をやるくらいの倫理観、という言葉にそれぞれが何を思うのか。そういうことが大事なんじゃないでしょうか。街中の木々も徐々に色づき始めていて、季節の移り変わりを感じさせる。大学生のころはこの時期になると地下鉄が紅葉を見に来た観光客でめちゃくちゃなことになるので、近所の山に行けよとキレていたのだが、今年に限って言えばそんなことはない。人出は戻りつつあるものの、やはり往時の勢いはない。インバウンドの観光客が文字通りゼロになってしまった京都を想像してもらえれば、間違いはないだろう。失われたまま、取り戻すことが出来ないものもある。夕方くらいに帰宅して、すこし仮眠を取ってから作業をする。夜は特に何をするでもなく、ぼんやりと過ごす。先週の「バナナサンド」は半裸ではしゃぎあうおじさんたちを見ることが出来てよかった。楽しそうにしているおじさんは良いものなのです。

 

 11/18(水):暑い。もうなんというか、空気が生ぬるくて季節感がないね~みたいなテンションではない。暑いよ。目が覚めたら完全に寝汗をかいているし、掛け布団は着ていなかった。春先の朝にやるやつだった。朝はなんだかバタバタと忙しくて、いつもとは別のピアスをつけていこうと思っていたのにそんな時間もなく、なんとかギリギリのタイミングで駅に到着。天気予報の最高気温を確認して、じゃあシャツ一枚でいいなと思って外に出たらそんな格好をしている人間はひとりもいなかった。天気予報じゃなくてカレンダーを見て服装を決めるタイプの人しかまわりにいなかったのかもしれない。そんなにがっつりコートを着ていたら絶対に暑いですよと思いながら電車に揺られ、四条通を歩き、アルバイト先へ。今日はアルバイトもバタバタと忙しく、もうそういう星回りの日だったのだと自分を納得させる。行くお店行くお店全部閉まっていたり駐車場が空いていなかったり。出勤時間を調整するべく、ここ最近よりは早い時間にタイムカードを切った。おそらく大丈夫だろうとは思うけれど、念には念を入れたい。ビビりの性分。お昼過ぎの京都は完全に暑くて、コートを手に持って歩いている人たちを横目に見ながら京都駅まで歩いた。東本願寺の猫たちは今日もお寺の関係者ではなさそうな人から餌をもらっていた。途中でスターバックスに寄り道をして、飲み物と甘いものをテイクアウトする。なんとなくイートインをする気分ではなかった。冷たいアーモンドラテを車内で飲みながら、ぼんやりと帰宅する。帰り着くまでにアーモンドラテを飲み切ってしまったので、家でインスタントコーヒーを淹れて休憩しながらさっき買った「ストロベリーロール」を食べた。期間限定の商品で以前から気になっていたのだが、見た目通りの味がして美味しかった。30分ほど仮眠を取り、夕方からは作業を進める。最近は集中力がなく、進捗も良くない。どうしたもんかいのぉ状態だ。夜はBSで放送していた「刑事コロンボ」を見る。ネチネチとしたコロンボは今週も最高だった。作業をしながら友人とやり取りをしていて、「謝ったぞ」というイクスキューズを得るためだけに、要するに自分を満足させるためだけに謝るのよくないね、思ってもいないなら余計に、という話になった。本当にそうだと思う。返信を返すのが遅れたときに、例えば「ごめん作業してて遅れた」とか言うのはやめるようにしたい。自分が作業をしているっていうのはあなたにとって悪いことでしょう?と告げているような気がして、相手にも自分にも不誠実に思えてしまうから。

   

 11/19(木):昨日に引き続き、今日も気温が高すぎる。昨日はニュースで気温に関する記録が色々更新されましたと報道されていたけれど、体感では今日の方が暑いような気がした。アルバイトはないけれど、いつも通りの時間に起きて朝ご飯を食べる。今週の「ZIP」ではマーティンが福井県を旅していて、若狭や小浜の風景が懐かしい。祖母が湖北に住んでいた時期があり、そのころはよく県境を北に越えて買い物に行ったりしていた。小浜市には「大谷食堂」というお店があって、そこに行くためだけに1時間以上親の運転する車に乗って出かけていたのだが、周辺一帯を巻き込む再開発の影響で閉店してしまった。閑散というよりも廃墟と表現した方が正確な商店街の一角にあったから先行きは不安に思っていたものの、もうあの焼鯖が食べられないのは悲しい。こういうご時勢で福井の方にも行けていない。再開発は進んでいるのだろうか。早いから車に乗って外出する。高速道路をひた走るナビの目的地は、宝塚大劇場だ。公演が中止に追い込まれて以来、初めての観劇。宝塚ICを降りて道を真っ直ぐ進むと、左手に見えてくる。大劇場がそこにある。北駐車場に車を停めて外に出ると、正面にそびえるのは「宝塚大劇場」と書かれた、あの建物だ。公演中止は数か月におよび、現在公演中の宙組にいたってはなんと一年ぶりの大劇場公演になる。半年以上ぶりにこの場所へ来たという感動がおしよせて、まだ入ってもいないのにすこし泣いてしまった。アルコール消毒と検温を済ませて劇場内へ進むと、そこに広がっているのは以前と同じようでまったく違う宝塚大劇場だった。入り口の制限に始まり、レビューショップのレジには誂えられたのであろうアクリルのカバーが備え付けられていて、休演期間中にこの劇団が積み上げてきたものの重さ、そしてそれでも届けなければならないものがあるという気概が感じられた。上げなければならない幕がある。改札をぬけて座席に座り、公演が始まったところでまた泣いてしまった。良かった、幕が上がった。宝塚歌劇は夢ではなかった。作品自体への感想は個別にエントリーを書くので省力するけれど、真風涼帆さんが『神々の土地』に続いてユスポフの宮殿で生活していて、すこし笑ってしまった。公演が終わった後は、すこし前に開業した新宝塚ホテルへ。クラシカルな雰囲気と現代的な要素がうまくまとまっていて、「夢の続き」というコンセプトにピッタリの綺麗なホテルだなと思った。予約出来なかったアフタヌーンティーは案の定完売していたし、2Fのカフェには列が出来ていたので、同じフロアにある別のお店に入って豪勢なお昼ご飯を食べることにした。オープンしたてで当たり前と言えば当たり前なのだが、内装は綺麗だし窓の外には阪急電車や大劇場が見えるしで、非常に素敵な空間だった。もちろんご飯も美味しかった。その後はせっかくだから花のみちを散歩してから帰路へ。行きと同じルートで滋賀へ帰った。ミュージカルを観たあと特有の疲れと高揚感が混じった独特なテンションになるのも久しぶりで、現状ものすごく眠い。やらなければならないことがたまってきているので、すこしでも作業をしてからベッドに入りたい。

f:id:Maholo2611:20201120004450j:plain

涙が出てしまう

 11/20(金):昨日ほどではないにしろ、今日もかなり暖かい。暖かいのに乾燥していて、寝ていると咳が出る。寝ているときに体温が上がるとめちゃくちゃ咳が出ませんか。あまり自覚はないのだが、朝に「めちゃくちゃ咳してたよ」と言われて気づく。インターネットで軽く調べてみると剣呑な病名がヒットするのだが、かなり心当たりがある。子供のころの病気をまだ引きずっているらしい。どうしたもんかいのぉ状態だ。今日もアルバイトがない。午前中の用事もなかったので、いつもよりは遅い時間に起きた。久しぶりに長く寝たような気がする。昨日見た天気予報によれば、午前中から昼にかけて雨が降るとのことだった。最近の天気予報はすごいですね。正午くらいに出かけたらえげつないゲリラ豪雨が降ってきて、びしゃびしゃになりました。キレそうです。下がりきったテンションのまま電車に乗り込み、京都を越えて大阪へ向かう。連日の観劇。今日の目的地は梅田芸術劇場宝塚歌劇団星組公演『エル・アルコン/Ray-星の光線-』で、なんと初日のチケットが奇跡的に当選したのだ。観劇生活をそれなりに続けていると、こういうこともある。徳を積んでいてよかった…。これからも捨てられた猫がいたら積極邸に保護していきたいと思う。こういうことを言っていると、何のチケットも当たらなくなるので気をつけてください。大阪駅に着いて、お昼ご飯でも食べようかなと思ったけれどいまいちお腹が空いていない。どうしようかなぁと悩みながら駅周辺をぶらぶらしていると、そういえば梅田に来るのも久しぶりなことに気付く。京都には毎日にように通っているけれど、やっぱり梅田の都会っぷりは違う。じゃあ東京行ったらどうなっちゃうんだよと思われるかもしれないが、それはもう別枠にして欲しい。こういうご時勢になってしまい、都会で買い物をする機会はなくなってしまった。寂しい限りだ。歩いていてもやっぱりお腹が空かないので、ルクアの地下にあるスターバックスコーヒーに入った。店舗限定のコーヒーフロートを飲みながら、これから観劇なのにどうしてコーヒーを注文したのだろうと思う。ちょっと浮足立っている。久々の観劇、久々の都会。おのぼりさんだ。コーヒーをしばいた後は、グランフロントにある「THE CITY BAKERY」で明日用のパンを買い込む。以前食べたメープルベーコンマフィン(たぶん正式名称ではない)がめちゃくちゃ美味しくて、悩んだ末に同じものを買った。カナダに生まれていたらメープルシロップを水みたいに飲んでいたと思う。そうこうしているうちにいい時間になったので、劇場へ向かった。外にはそれなりに人がいたけれど、茶屋町のゴンチャには一切列が出来ていなかったしシェイクシャックにいたっては閉店していた。都会ほど、失われたものは多いのだろう。お芝居の感想はまた個別に書くけれど、とりあえずめちゃくちゃ良かった。楽しかった。やっぱり人間は定期的に華やかなレビューを見ないとダメになります。礼真琴・舞空瞳のコンビは本当にすごい。踊りすぎて足がちぎれたりしないのだろうか。夢見心地で電車に乗って帰宅。その勢いのまますこし作業をしてから眠りたい。

f:id:Maholo2611:20201120230158j:plain

最高。

 11/21(土):寒い。急に寒い。気温の緩急が激しい。今中慎二の投球術みたいだ。こういうの、何らかのハラスメントになりそうですね。オードリーが10代のアイドルにやるキン肉マン例えみたいな感じで。朝起きて、午前中はぼんやりと過ごす。朝ご飯は昨日から楽しみにしていたメープルベーコンマフィンで、記憶と相違ない美味しさだった。3日に1回くらいは朝ご飯にこれが食べたい。たぶん実際そうなったら飽きるような気がするけれど。朝ご飯は毎日同じメニューでいいという人とそうではない人がいるけれど、私は完全に後者。毎朝トースト、毎朝白いご飯でも嫌になると思う。アメリカやヨーロッパの人は朝ご飯というか、基本的に食事は同じものでいい派の人が多いような印象がある。ドイツを旅行したときはどのホテルに泊まってもまったく同じメニューが朝食の会場に並んでいたし、ロンドンに滞在したときもそうだった。「いつも違うご飯を食べるなんて!」とカルチャーショックを受ける人がいる、なんて話も聞いたことがある。文化というものは多種多様で、面白いなと思う。今週の「あさパラ」は感染症の話が多かった。学天即が出ていたのでM-1の話を期待したけれど、そううまくはいかず。今年の決勝はどうなるだろう。とりあえずラランドがワイルドカードになって欲しい。昼前から外出。車に乗って、家電量販店へ向かう。色々と調べた結果、機種変更したてなのにスマートフォンの調子が悪いのはsdカードのせいじゃないか?という仮説に行きあたった。いざメモリーカード売り場に行ってみると閉店前日だったけと思うくらいに商品が少なく、悩んだ末にお店を出て別のところへ行った。移動時間、車で1分。我が町には、車で1分の距離に家電量販店が3つ集まっている謎の場所があるのだ。この田舎にあって、そこだけ池袋駅前みたいになっている。sdカードの品揃えはこちらの方が良くて、事前に調べて検討をつけていたブランドの商品を買った。今日の主な目的は終了したので、その後は隣接するショッピングセンターでお昼ご飯用の買い物をしたり、薬局に寄ってなくなりそうな歯磨き粉とフロス、マスクを買い足してから帰宅した。吉本新喜劇を見ながらお昼ご飯を食べていると、小学生のころを思い出す。関西ローカルなノスタルジー。食後はすこし仮眠を取ってから、作業を進めた。いざ入れ替えたsdカードはしっかり動作してくれて、PCに繋いでもしっかりと認識したのでひと安心。メモリーエラーが頻発していたカメラもぬるぬる動くし、キャリアのデータバックアップ機能も水を得た魚のようになった。sdカードが壊れかけているだけでここまですべてがダメになるのかという気づきがあったけれど、こんなに寿命って短いもんかなという疑問もある。自分の引きが悪かっただけかもしれないけれど。夜はぼんやりと過ごす。日本シリーズの影響で放送時間が遅れていた「嵐にしやがれ」は相葉雅紀記念館で、メンバーの歴史を振り返るコーナーは嬉しいけれど、「終わり」を明確に意識してしまって寂しかった。もうすこし作業をしてから眠りたい。日本シリーズの初戦は巨人が負けていた。

 

 11/22(日):今日は寒くもなく暑くもなく。日影は寒いし陽向はぬるい。そういう雰囲気の一日だった。起きて、ぼんやりと朝ご飯を食べながら録画していた「おにぎりあたためますか」を見る。今週からは札幌近郊をめぐる旅が始まったのだが、冒頭で胆振東部地震にふれていた。2年遅れの再放送でなければ、この地震があったことは思い出さなかっただろう。札幌に行きたい、札幌というか北海道を旅行したい。大学一回生の冬休みに友達と行ったきり、再訪の機会に恵まれていない。2泊3日の行程でジンギスカンを2回食べたり、帰りに乗ったLCCで隣のカップルがずっとキスをしていたり、色々なことがあった。隣はそんなんだし機体トラブルで出発が遅れて関空から帰る特急がギリギリになって京都駅終電ダッシュをする羽目になったり。思い出は鮮やかなのだが、一緒に行った学科の同期2人は音信不通になってしまった。ついでに言うと行方不明でもある。哲学科らしいと言えば哲学科らしいものの、それだけで片づけてはいけないような気もする。みんな、元気かなぁ。昼すぎに出かけて、幼馴染みと会った。近所の喫茶店で話し込んでいたらいつの間にか待ちが出ていたので、頃合いを見て別のお店に移る。ポリシー的に、列が出来ているお店でゆっくりしないようにしている。ずっと何かを注文しているなら別だけれど、空になったお皿をテーブルに残して話すのも落ち着かないところがある。2時間ほど話して解散。次に会うのは年末の忘年会だろうか。夕方からは作業を進めた。コーヒーがいい具合に効いていたが、時間が経つとやっぱり手が震えてくる。カフェインオフへの道のりは険しい。夜は「バナナマンのせっかくグルメ」を見ながら過ごす。高知県のチキン南蛮が美味しそうだった。もうすこし作業をしてから眠りたい。

f:id:Maholo2611:20201122220815j:plain

ザッハトルテ

 

 

週間日記(2020/11/9~11/15)

 11/9(月):寒い。すこし前まで書き出しは常に「暑い」だったのに、今ではこの有様だ。四季の移り変わりが激しい。体調が強くない人間にはつらい季節だ。いつもよりすこし早めに準備をして、最後に新しく買ったピアスを装着した。ピアスホールを開けてからもうすぐで一年が経とうとしているが、未だに付け外しのときはドキドキする。三か月くらい経ったときにもう大丈夫だろうと思ってセカンドピアスを付けて、一週間くらいあとにファーストピアスに戻そうとしたら血がドバドバ出てきたときは真っ青になった。ピアスホールからドバドバ出血しても全然痛くないんだなと思った。ホールが安定するまで時間がかかる方の人間だったようで、さすがにもう大丈夫なはずなのだが、やっぱり怖いものがある。新調したピアスはつけやすかった。ファーストピアスは医院で開けた華奢で小さいものだったので、大きくて重いものをつけると感覚がかなり変わってくる。左の耳たぶが引っ張られているような感じ。こうやってテンションを上げて、自分の機嫌を取って、ようやくアルバイトへ。いつも通りの電車に乗り込む。今日はめちゃくちゃ忙しくて、一日があっという間だった。お昼の休憩時間には喫茶店ではなく、ラーメン店へ。四条通を西へ向かい、烏丸通を一筋上がったところでまた西に曲がる。そのまま真っ直ぐ進んでいくと「錦 セアブラノ神」がある。セアブラノ神は京都市内にいくつかの店舗があって、この錦店はすこし前にオープンしたばかり。注文した背脂醤油ラーメンは一見していわゆる京都ラーメンで、美味しかった。このお店がある場所には以前「花雷」といううどんのお店が入っていたのだが、いつの間にか長岡京に移転してしまったらしい。ときどき行っていたのに…。お店自体の独特な造りはそのまま維持されていて、すこし懐かしかった。また行きたい。今度はつけ麵を食べようかと思う。休憩明けも忙しくて、夕方くらいまでバタバタと作業をしてからタイムカードを切った。太陽はほとんど沈んでいるような時間だったけれど、お昼ご飯をしっかりと食べてしまったので京都駅まで散歩をした。烏丸通を避けて細くて信号の少ない路地を歩いていたら、めちゃくちゃ危なかった。夜になって視界も悪くなっているはずなのに、車のスピードはまったく落ちない。京都市内の交通事情(運転事情)は最悪だと思う。命の危険を感じながら京都駅でJRに乗り込み、ジャンプを買ってから帰宅。『呪術廻戦』と『チェンソーマン』、『僕のヒーローアカデミア』の作者たちは読者に一番でっかい奇声をあげさせる展開が描けたたら勝ち、みたいなゲームでもしているのだろうか。正直ものすごく眠いけれど、すこし作業をしてから寝たい。

f:id:Maholo2611:20201109223615j:plain

背脂醤油ラーメン、チャーマヨ丼

 

 11/10(火):今日も寒い。そろそろ掛け毛布を出すか悩み始めるような気温になってしまった。天気予報によれば週末にかけてすこし暖かくなるようなので、今は時期尚早というところだろうか。「ZIP」に黒スーツ集団が出ていた何事かと思ったら、三代目 J SOUL BROTHERS のみなさんだった。この番組で火曜日のメインパーソナリティを勤めている山下健二郎さんは京都府出身なのだが、あまり関西感がない。非常にあやふやな「関西感」なる概念はなんというか、説明が難しい。高畑充希さんや有村架純さんにはないけれど、戸田恵梨香さんにはある。タカラジェンヌで例えるなら、蘭寿とむさんや壮一帆さんにはないけれど、龍真咲さんや紅ゆずるさんにはある。そんな感じだ。何の話ですか、これ。今日もいつも通りの電車に乗って、アルバイトへ向かう。すこし前に買ったブルックスブラザーズのトートバッグをおろした。綺麗なネイビーのデザインもかわいいし、チャリティーの一環になっているらしく一石二鳥。内側に一切ポケットがないストロングスタイルなので持ち歩くポーチがひとつ増えるけれど、それは宿命なので仕方がない。大きく「BROOKS BROTHERS」と書かれ、ゴールデン・フリースのロゴも入っているのでまったく関係のないセットアップを着ていてもブルックスでキメているように見える。これがメンタリズムです。アルバイトは今日も忙しくて、午前中はあっという間に過ぎてしまった。昼過ぎに休憩を取り、悩んだ末に近くのスターバックスへ行く。今日は30分で戻る予定だったので、特に作業をするわけでもないし…ということで、先週に引き続き。甘いコーヒーでも呑もうかなと思ったけれど、結局あたたかいゆずシトラスティーを注文した。柑橘の香りにほっとしながら、お茶の定義ってどうなんだろうかと思い調べてみると、どうやら「茶外茶」という概念があるらしい。ざっくり言えば、お茶の木以外の植物の葉っぱや花などから作ったお茶とのことだった。考えてみると、ジャスミンティーやそば茶も本来のお茶ではない。意外と寛容な世界だ。休憩を取ったあともバタバタと務めて、夕方くらいにタイムカードを切った。夕暮れ時の京都を散歩する。風が冷たい。東本願寺の横には今日も猫がいて、おそらく寺の関係者ではないのだろう人から餌をもらっていた。こういう光景を見ると、一番気楽だもんなぁと思ってしまう。帰宅してすこし作業をしようかなと机に向かったら、めちゃくちゃ手が震え始めた。カフェインの離脱症状だろう。そういえば今日はまだコーヒーを飲んでいないし、カフェインの入ったものを摂っていない。どうしたもんかなぁと悩んだけれど、30分くらい仮眠を取ることにした。目が覚めるとスッキリ。夜は「マツコの知らない世界」を見たり。今日はしっかり作業をしてから眠りたい。

youtu.be

 

  11/11(水):ポッキーの日。ポッキーと言えばガッキーのあのCM。あのCMはもう14年も前になるらしい。2006年て。2006年て…。第一回ワールドベースボールクラシックの年ですよ。テレビの前で熱狂していたのがもう14年前。びっくりしてしまう。特にポッキーを食べることなく過ごした今日は、昨日と同じく寒かった。ちょっと寒いなぁと思いながら外を歩いたりするのが好きなので、ずっとこれくらいがいい。春秋あるある、「ずっとこれくらいがいい」って本当にずっと言ってる。今日の「ZIP」では工藤阿須加さんが玉置浩二の『田園』を紹介していて、バナナマンの日村さんが思い出された。設楽さんは「俺は日村さんの『田園』が大好きなの」とよく言っているが、私も日村さんの歌う『田園』が大好きです。シャツに厚手のセーターを着て最寄り駅へ向かっていると、北風が冷たい。駅周辺のビル風が身にこたえる。最寄り駅にビルらしいビルがあるんですか?と聞かれれば、曖昧に頷くしかないけれども。ちょっと寒いかなぁと思っていたけれど、アルバイト先まで四条通を歩き、階段を上ると微妙に汗をかく。代謝が良すぎる。夏場はもちろんのこと、冬場だって汗をかく。蒸れる。湯気が出る。冷凍庫から出したてのピノくらいゆらゆらした蒸気的なものが出る。アルバイトは今日も忙しく、気の休まるタイミングがなかった。時給が同じなら楽な方がいいと思うのだが、仕事があまりないなら給料泥棒になるのでしばらく来ませんみたいな人もいて、考え方は色々あるなぁという感じがある。しょせんアルバイターなので…という立ち位置を私は貫きます。昼過ぎに休憩をとって、今日はしっかり昼食を取った。四条通から富小路通を上がっていったところにある「小松食堂」に入り、本マグロ丼を注文する。軽く漬けになったマグロがしっかりとのっていて、美味しかった。大量のマグロを食べたくなる日がときどきある。私はお造りで全然白いご飯を食べられるタイプです。刺身定食も好きなのだが、お店によっては明らかに刺身が足りないよというところもあるので難しい。ちょっとしたギャンブルになるのが刺身定食という食べ物だ。休憩から戻って、夕方くらいにタイムカードを切った。今日も夕暮れ時の京都を散歩する。冷たい風が気持ちいい。人の少ない路地を歩いていると、自分以外の人がまったくいなくなるタイミングがあったので、マスクを外してみた。するとこの季節特有の冷たく乾いた風が鼻から肺までを満たしていくのがありありと分かって、ものすごく心地よかった。呼吸、かくあるべし。解放的な呼吸が忌避されるようになって久しい。呼吸に命の危険が伴うのは、よく考えてみれば以前からそうだけれど、新たな危険が現れるとみんなの意識が変わるのだろう。共通の敵、というやつなのかもしれない。そういえば4月くらいに抽選が外れたミズノのフェイスカバーが買えるようになりましたよというメールが来たけれど、もう間に合っているので大丈夫です。帰宅して、さっさとお風呂に入って夜はネタ番組を見ながら過ごした。寝る前に作業をしていたら急にPCが固まってしまい、途方に暮れていたらWindowsの更新が始まった。結局1時間くらいかかって再起動が終了。やる気がそがれたけれど、最低限の作業はやってから眠りたい。

f:id:Maholo2611:20201111223830j:plain

本マグロ丼

     

 11/12(木):今日も比較的寒かった。アルバイトは入れていないので、いつもよりはゆっくりした時間に起きる。出来れば毎日8時間くらいは寝たいけれど、そうは言ってられないこともある。不労所得が欲しい。かの哲学者ルネ・デカルトにも不労所得があったと聞いたことがありますが、本当なんでしょうか。北欧の炉部屋で思索にふけるにも、先立つ物は必要だという寓話でした。「デカルト不労所得」、故事成語っぽい。なんでこんなにデカルトの話をしてるんだ。最後に言っておくと、『デカルトの骨』という本を先輩に紹介されて面白そうだなと思ったけれど、未だに読んでいません。買ってもいません。主よ、許しを願います…エイメン。リンクだけ貼っておきます。

デカルトの骨 死後の伝記

デカルトの骨 死後の伝記

 

  ぼんやりと朝ご飯を食べながら、録画していた「おにぎりあたためますか」を見る。先週は桃の大食いチャレンジに敗れた戸次重幸が最終的にリバースするところまでが克明に記録されていたが、今週の戸次重幸も桃の不調を引きずっていた。具体的には顔面が真っ白だった。いい大人が無理な大食いをして体調を崩す様子を映す番組、一体なんなんだ。いくら地方ローカル番組とはいえど。早い時間から車に乗って、auショップへ向かった。もう本当にスマートフォンがうんともすんとも言わなくなる時間が出てきたので、重い腰を上げて機種変更だ。対面の手続きは多少のめんどくささがあるし、なによりこういうご時勢だからオンラインショップで本体を買うことも考えたのだが、やっぱりどうしても実機を見たかった。事前にしっかり予約をして行ったら、入り口を入ってすぐのところにあるホワイトボードに結構大きく名前が書いてあって恥ずかしかった。そんなに晴れがましいことじゃないよ、機種変更。納車式的な晴れがましさだった。実機を見るまではGoogle Pixelにしようかと思っていたのだが、いわゆるウォーターフォール式のディスプレイが好きになれず。あれがウォーターフォール式に当てはまるのかは定かではないけれど、ベゼルがしっかりしている方がなんとなく安心するのだ。予想通り正午すぎまでかかって手続きは無事に終わった。ひと安心。その後は再び車に乗り、栗東にあるラーメン店「真咲雄」へ。滋賀県で福岡式(異論が噴出しそうな言い方)のとんこつラーメンが食べられる、数少ないお店のひとつ。ここのみそとんこつラーメンは本当に美味しいのだけれど、今日は一番スタンダードなとんこつラーメンを食べた。もちろんとんこつラーメンも美味しい。今日は替え玉をひと玉まるまるではなく、半玉にするという大人の動きをすることが出来た。一歩ずつ成長していきたい。麺をすすり終えたあとは、草津のエイスクエアへ。部屋着ボロボロ問題を解決するため、GUとユニクロに入った。最近オープンしたGUは県内唯一の大型店で、今日初めて行ってみてけれど、本当に大型店だった。GUの壁一面に靴が並んでいる光景、なかなかない。ただ、問題の部屋着はユニクロで買った。ユニクロの方がこう、良さげだったから…。なんやかんやで夕方くらいに帰宅。スマートフォンをセットアップして、色々な機能を確認する。カメラがめちゃくちゃ本格的で、全然使いこなせる気がしない。静止画も動画もプロ顔負けの作品が…ということらしい。頑張ります。設定は夜までかかった。ほとんどアプリのインストール時間だった。その後は特に何をするでもなく。TVerで「かりそめ天国」を見ながら作業をして、ベッドに入る。

f:id:Maholo2611:20201113010300j:plain

とんこつラーメン味玉トッピング

 11/14(金):今日もアルバイトはなし。昨日眠る前に「明日は朝一で映画を見に行くぞ」と決めていたのですこし早めに起きたのだが、眠気覚ましのシャワーを浴びているところでもう決心が揺らいでいた。感情の8割が「眠い」に占められていた。眠いな…でもな…今日を逃すと見に行くタイミングなさそうだしな…。朝ご飯に食べたミスタードーナツのエビチリパイが美味しかったのでテンションが上がり、その気持ちを維持したまま車に乗り込むことが出来た。美味しいものは偉大。湖岸道路をひた走っていると、右手に見える湖面がびっしりと黒いなにかで埋め尽くされていて、信号待ちのときにじっと見てみたらおびただしい数の水鳥だった。怖いというか、かなり先まで湖面が黒くなっていて、ちょっと気持ち悪かった。滋賀の冬が近づいている。イオンモールに到着して、映画館に到着すると本当に『鬼滅の刃』一色だった。煉獄さん…。ただ目的は『鬼滅』ではなく、『罪の声』。野木亜紀子が脚本をやると言うなら、観なければならない。『アンナチュラル』、『MIU404』。160分という上映時間に備えて、朝から水分はなるべく摂らないように心がけていたのでなんとか最後まで集中することが出来た。世間がこういう状態になってからというもの家で映画やドラマを見る機会は増えたけれど、やっぱり劇場で観る映画は違う。映像や音響もそうだけど、観る側のテンションが圧倒的に違う。どれだけ気を付けていても、家で映画を見ていると携帯を触りそうになってしまう。作品はめちゃくちゃ面白くて、今日はやめにして二度寝しようかなぁなんて思っていた自分を張り倒そうかと思った。野木亜紀子は、怒っている。それも痛烈に怒っている。この世界には唾棄すべき邪悪があり、それは決して「臭い物に蓋をする」なんてことで見過ごしていいものではないのだと、怒っている。「声をあげる」ということ。「あの人は自分だったかもしれない」と考えること。野木亜紀子の怒りは私たちだけでなく彼女自身にも向けられていて、だからこそ観るものの心をえぐるのだと思った。あと、舞台が関西なのでよく知っている風景がちらほらと映っていたのも良かった。序盤で星野源が懐石料理を食べていた場所は、窓からの風景に南座と菊水が見えたからおそらく「いづもや」だし、大津のサービスエリアなんかも映っていたので嬉しかった。ものすごく面白いので、是非観てください。昼過ぎに映画館を出て、ユニクロと書店をうろうろしてから帰宅。ニュースで東京のユニクロが物を売るってレベルじゃないくらい混雑していたという情報を聞いて、あまりの違いにびっくりしてしまった。イオンモールユニクロは普通に営業していたので…。午後からは録画していたバラエティ番組を見ながら作業をする。「水曜日のダウンタウン」やら、「ロンドンハーツ」やら。夜はテレビで放送していた『ファンタスティックビースト』を見たり。ものすごくインプットの多い一日。『罪の声』は、エントリーを書きたいと思う。 

 

 11/14(土):そういえば昨日は13日の金曜日だった。こういうご時勢だけれど、ジェイソンは元気にしているだろうか。最近はキャンプが流行っているし、むしろ生き生きと活動しているのかもしれない。生き生きとしたジェイソンってなに?輪をかけて怖いよ。寝る前にTVerで見た「ゴッドタン」は腐り芸人セラピー回で、ゲストは流れ星だった。最近芸人の間で流行っている「どっちがネタを書いているか」「ゼロイチをやっている方がえらい」みたいな論調で流れ星が争っていたものの、なんというかコンビにとってプラスになるタイプのプロレスではなかったような気がする。プロレスという言い方もあれなので、エチュードと表現する方がいいかもしれない。テレビもラジオも一種のエチュードだと私は思っているのですが、どうでしょうか。流れ星のコンビ仲がもうめちゃくちゃになっていて、「ネタ書いている方がえらい」の発起人みたいな存在であるハライチの岩井さんすらちょっと引いていたのが一周して面白かった。朝起きて、ぼんやりしながら朝ご飯を食べる。和牛がコンビ揃って料理をしていたので、クックパッドの配信かと思ったら違った。寝起きにややこしいことをしないで欲しい。水田のモノマネレパートリーに安倍元首相が追加されていたけれど、ものすごく絶妙に似ていなかった。午前中はぼんやりと過ごす。「あさパラ」、「せやねん」の関西ローカルゴールデンリレーを見届けて、昼前に外出。車に乗ってauショップへ。前に使っていた本体を下取りに出すためだけの来店だったのだが、2日前と同じくホワイトボードには名前が書かれていた。晴れがましいよパート2。2日前とまったく同じアンケートに答えたあとは以前の端末を引き渡し、それをもって手続きがすべて終了した。足掛け3日に渡る機種変更に終止符を打ち、イオンモールへ向かった。今度は2日連続のイオンモール。お昼過ぎに到着して、まずは「ホノルルコーヒー」でパンケーキを食べた。都会にあるホノルルコーヒーはめちゃくちゃ混んでいるけれど、イオンモール草津にある店舗はそんなに混んでいない。ガラガラというわけでもない、いい具合の人手。スタンダードなパンケーキというものを久しぶりに食べたらめちゃくちゃ美味しくて、同時に懐かしい気持ちになった。子供のころにこんなパンケーキは食べていなかったような気がするけれど。

f:id:Maholo2611:20201114213635j:plain

パンケーキ

 それからは薬局で洗顔フォームを買ったり、書店で雑誌を買ったり。今月号の「Meets」の表紙にはお笑い芸人の銀シャリが載っているのだが、その写真がめちゃくちゃ良い。二人っきりでサシ飲みをするお笑い芸人、素晴らしいと思う。夕方くらいに帰宅して、作業を進めた後に仮眠を取ったのだが、コーヒーを飲み過ぎたせいかトイレが近くなってしまいほとんど眠れなくてシンプルに作業効率が下がってしまった。夜はぼんやりと過ごす。すこし作業をしてから眠りたい。

 

 11/15(日):天気が良い。秋晴れ。昨日は眠る前に『ハリーポッターと謎のプリンス』を見た。世代ど真ん中というか、映画シリーズの公開と10代がほとんどかぶっていたので、11歳のころはフクロウ便が来やしないかと思う毎日だった。最近は日本テレビ金曜ロードショーで『秘密の部屋』や『アズカバンの囚人』、『ファンタスティック・ビースト』が放送されていて、「ハリポタ熱」が再燃している。幼い頃に原作もすべて読んだのだが、『謎のプリンス』と『死の秘宝』は展開が重すぎて、映画版を見ることが出来なかった。かわいいころが自分にもあったのだ…。20代も半ばを迎えたし、熱も再燃しているしということで、家にあったブルーレイを引っ張り出す。劇場には行っていないのに、ブルーレイは買っているという矛盾。『死の秘宝』にいたってはまだシュリンクがかかったままだった。 『謎のプリンス』は完結に向けての前哨戦というか、『死の秘宝』と合わせてひとつの作品という雰囲気がある。ダニエル・ラドクリフエマ・ワトソンルパート・グリントの三人はもう完全に大人になっていて、あんなにかわいかったのに…と思ってしまう。ネタバレになりそうなのでストーリーに関しての詳しい言及は避けるけれど、『ハリーポッター』という作品の中で一番カッコイイのはセブルス・スネイプだと言わせてください。朝起きて、午前中はぼんやりと過ごす。昨日のお昼にパンケーキを食べてからというもの内臓の調子が悪くて、ガスが溜まっているような感じがある。食後は特にひどくて、お腹からずっと異音がしてくる。違和感を抱えながら、録画していた「ヒルナンデス」を見た。水曜日の放送回は、珍しくオードリーが街ロケに出ていたので、思わず録画してしまった。オードリーのロケは最高です。午後からは作業をしたり、すこし仮眠を取ったり。今週の日記はめちゃくちゃ長くなってしまったうえに、その理由もあまり分からないので怖い。ついに1日1000文字以上書いていることになってしまった。筋肉がついてきたのかもしれない。日記筋。一年以上かかってようやくか、という気持ち。