感情の揺れ方

それでも笑っていたい

感想:宝塚歌劇団花組『あかねさす紫の花/Santé‼』

 花組博多座公演ですね。ゴールデンウィークの博多という、日本で一番人が多いんじゃないかっていうタイミングなんですが、奇跡的に一般でチケットが取れたので嬉々として楽しんできました。博多座は初めてだったんですが、内装が綺麗だったり改札の中にはいろいろな売店があったりで、大劇場とは違った趣があり良かったです。あと椅子も座り心地がよく、個人的には梅芸より腰に合う感じがありました。

 さて、今回は二本立ての公演で、一本目が『あかねさす紫の花』、二本目が『Santé‼』になっていますね。『あかねさす』は過去に5回上演されている人気の演目で、今回が6回目、明日海りお・仙名彩世のトップコンビによる上演です。このコンビ、『ポーの一族』を経てますます磨きがかかってきてるなという印象です。本当にすごい。特に表現力とデュエットダンスという点においては突出したものを感じます。明日海さんはもとより、仙名さんはトップに就任して以降本当に卓越した能力を発揮されているなと思わされます。仙名彩世さんに関してはいつかのタイミングで個別に記事を書きたいですね。『あかねさす』は役替わりのある演目ですが、私が観た公演の配役は大海人皇子が明日海りおさん、中大兄皇子が鳳月杏さん、天比古が柚香光さんでした。本公演じゃないとはいえ、主演も役替わりするんだなぁと。観劇した感想では大海人皇子の方がメインというか、舞台では映えるというか、明日海さんは大海人の方が似合う感じかなとぼんやり思いました。でも明日海さんの中大兄も観たい。元も子もないですが、役替わりのある公演は全パターン観たい。次の『エリザベート』も全パターン観たい。話が逸れてすいません。明日海さんですが、愛する人を実の兄に奪われるという難しい役どころを見事に演じられています。大海人皇子という役の難しさは、中大兄皇子との関係だけではなく、少年期から青年期をすべて自分で演じるというところにもあると思います。少年期に額田と出会い、結婚し、兄との確執があり…という大海人の半生を演じ切るという難しさ。少年期と青年期が全く同じ人物に見えてもダメで、全く別の人物に見えてもダメ。役柄が経験してきたことを反映しないといけない。しかし『ポーの一族』でエドガーを見事に演じられた明日海さんは今回もその表現力をいかんなく発揮されています。明日海さんに引っ張られるように仙名さんは額田を、鳳月さんは中大兄を。非常に見応えのある作品でよかったです。大海人皇子は可哀そうで、額田女王は勝手で、中大兄皇子は輪をかけて勝手で、天比古はただただ悲惨で…。脇を固める瀬戸かずやさん、芽吹幸奈さん、桜咲彩花さん、乙羽映見さん、音くり寿さんの実力と存在感も確かなものでした。

 『Santé‼』は大劇場に続いて二回目の上演ですね。個人的に大好きなショーなので、また観れる!という気分でした。本公演から人数が半分になった影響で、配役もさまざま変更されています。オープニングの5大シャトーには優波彗さんと亜蓮冬馬さんが、第二章では美穂圭子さんと星条海斗さんの代わりに鞠花ゆめさんと天真みちるさんが、第六章は鳳月杏さんが「薔薇色の人生」、桜咲彩花さんが「愛の賛歌」を。代表的なところはこれくらいでしょうか。あとは、美穂さんが歌われていたソロを羽立光来さんが担当されていましたが、美穂さんに勝るとも劣らない抜群の歌唱力を発揮されていました。この方は本当に歌がうまい。羽立さんや天真さん、和海しょうさんなど実力のある方に場面があてられていると、観ている側としてはうれしいですね。このショーは大劇場公演から客席降りがあり、今回の博多座でもその演出がありました。ただ私は二階席だったので乾杯はできず。ところが私が観た翌日の公演から客席降りが取りやめになったので、観れただけでもいいか。という感じです。演者さんやスタッフさんが急性胃腸炎になったため、ということなのでとても心配です。今のところ休演者の発表はありませんが、みなさんの体調は大丈夫なのでしょうか。

 ともあれ今回の博多座公演、とても楽しむことができました。地方公演はなかなかチケットが取れませんが、頑張って取る甲斐はありますね。